青のトロイメライ

@ukonno

第一話

濃紺のセーラー服が左右に揺れる。

艶がかった黒い革靴が木の廊下を叩く音は、タタッ、タタンとリズムを刻む。

前から見ても後ろから見てもそっくりな姿の二人が並んで歩いていく。

高等女学校はこの日、新一年生の入学式が執り行われ、姉の貴子が生徒代表として祝辞を読むことになっていた。


「貴ちゃん、緊張してる?」


「全然。豊ちゃんこそ緊張してるんじゃない?」


「全然」


妹の豊子は校歌の独唱をすることになっていた。

お互いが、昨晩まで必死に練習をしてきたことを知っていたし、お互いの努力も才能も一番良く知っていた。

だからこそ発破をかけ合っていたのだった。


そんな貴子と豊子に憧憬の眼差しを向ける生徒で廊下は溢れかえっていた。


「貴方達、早く教室に入りなさい。ベルが鳴りますよ」


教師が生徒たちを戒めるように大きな声を出すが、貴子と豊子が傍までやって来ると、声色を変える。


「貴子さん、豊子さん、ご機嫌麗しゅう。調子はどうですか?」


「ご機嫌麗しゅうございます、先生」


と声が重なり、

「もちろんですわ」


やはり声が重なる。

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