第35話 ランク
スカウトであるシャンディさんの案内で、ダンジョン内を素早く駆け抜ける。
ダンジョンはかんりは広く、天井も高い。
内部にはそこら中に苔が生えており、それが強い光を発してくれているので視界も良好だった。
「はぁっ!」
途中、でかいネズミやらワームやらに遭遇するが、
このダンジョンに出現する魔物は基本それ程強くはない。
本来、ここでの最強モンスターはジャイアントワーム――Bクラス――と呼ばれるワームの亜種で、ミノタウロスなんていう大物が出て来るなはずのない場所だった。
何故そんな化け物が出て来たのかは分からないが、とにかく俺達は急いで先に進んだ。
「大丈夫ですか?」
走りながら訪ねる。
屋敷を出て手からここまで、俺とアイシャさんはほぼ走りっぱなしだった。
流石に俺も少々疲れて来ている。
アイシャさんはどうかと思って訪ねたのだが――
「へぇっ……へぇっ……平気です」
何故かシャンディさんの方から返事が返って来た。
まだダンジョンに入って30分程しか経っていないのだが、彼女はもう既に息が上がっていた。
ダンジョン内は足場が悪く、急こう配も大きい。
魔物の処理も頻繁に必要だ。
平地を走るより遥かにきついので、そう考えるとまあ仕方がないのかもしれない。
寧ろ、俺達の速度に合わせて30分も走り続けたのは大したものだと言っていいだろう。
俺は村人とは言えレベルが99だし、アイシャさんは特殊クラスだからな。
「5分程休憩しましょうか」
「はぁ……はぁ。す……すいません。お嬢」
「気にしなくていいわ。私達も走りっぱなしだし、ミノタウロスと戦う前に一息つきたいと思っていた所だったから」
アイシャさんは背負ったバックパックを下ろし、中から水の入った筒と保存食を取り出した。
俺も同じ様に必要な物を取り出し、しゃがんで口にする。
「まだ目的地にはかかりそうですか?」
「いえ……もうすぐです。今のペースなら……後5分ぐらいで」
シャンディさんは息を整えつつ、ゆっくりと答えてくれた。
どうやら休憩のタイミングとしてはドンピシャだったらしい。
「しかし、でっかい洞窟ですね」
結構な速度で30分も走っているのに奥につかないのだ。
恐らく全長は10キロ20キロでは済まないだろう。
細かい枝分かれを含めれば、どれだけの広さになるのか想像もつかなかった。
「ここは国内最大級のダンジョンになりなりますから」
「なんでも、ここは元々ワールド・ワームの巣だったそうですよ」
「ワールド・ワーム?ですか」
一息ついて、呼吸を整えたシャンディさんが補足を加えてくる。
俺はその名前から、糞でかいワームの魔物を思い浮かべた。
「全長数キロはある、SSランクのモンスターだったそうです」
「凄いなそりゃ……ていうか、魔物のランクってSより上があるんですね」
勝手にSがトップかと思っていたが、どうやら更に上がいるらしい。
異界竜の事を思い出す。
確かにあの化け物とバンシーとで同等かと言われれば、流石に疑問符の出るカテゴライズになる。
そう考えると、更に上のランクが用意されるのは当然と言えば当然の事だった。
しかしあいつ、一体何処に飛んで行ったんだろうか?
餌を求めてレンタンに飛んでくるのとかだけは、マジで勘弁してほしい物だ。
まあ他ならいいという訳でもないが。
「ええ、Sランクの上にはSS。そしてその更に上には、SSSランクの存在、
アイリーンの言っていた魔人がそれだろう。
ひょっとしたら他にも存在している可能性もあるが、まあその辺りは考えても仕方がない。
戦う事なんてまずないだろうし。
「さて、それでは行きましょうか」
アイシャさんの一言で、俺とシャンディさんは立ち上がる。
彼女の顔に疲労の色はもう見えない。
俺も体が軽くなった気がする。
短時間だったが、回復としては十分だった様だ。
俺達はさらに奥を目指して、再びダンジョン内を疾走する。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます