act.7 炎、水、風、土


「なぁモニカ、俺にもっと魔法について教えてくれよ。結局俺の属性って雷ってことでいいのか?」

「うーん、そもそもそれがおかしいのよ。人間の属性って言うのは炎、水、風、土……そして無属性に分かれる訳」

「つまり、俺の属性ってのは本来ないのか?」

「古い文献には雷魔法らしきものもあったらしいんだけど、今じゃ水と風の複合魔法じゃないかって言われてるわね」


 モニカは顎に手を当て首をひねる。


「私も完全に理解できてるわけじゃないんだけど、魔力と属性って水と絵の具みたいなもので、色に染まらないと大きな力なにならないの。だから、無属性だと魔力もただの水ってわけ」


 そして、その属性の色に染まった水を魔法使いがイメージで形と役割をもたせて魔法となる。


「イグナールの場合は魔力……綺麗な水に昨日の雷が影響して、特別な属性を得た……ってことじゃないかな? こんな特殊な事聞いたこともないから、私の憶測だけどね」

「つまり、前例が全くないから俺の魔法もわかんないってことなのか……」


 両の手のひらを見つめながら深くため息をつくイグナール。


「確かに、わからないことだらけだけど打つ手がないわけじゃないわ……ないなら作ればいいのよ。新しい魔法を、ね!」


 モニカは人差し指を口に当て、ウィンクして見せる。


「作る⁉ そんな簡単に出来るものなのかよ」

「簡単なわけないじゃない」


 魔法と言うのは人の歴史の中で、日々進化し成長してきたものだ。対象を排除するための攻撃魔法、身を守るための防御魔法、武具や体に属性を付与する補助魔法。魔物との戦い、他国との戦い、病気や怪我との戦い。様々な戦いで新しい魔法が生み出されてきた。


 現代の人間の多くは、その先人達の知恵を借りているに過ぎない。


 詠唱と魔法名と言う鋳型に魔力を流し込み発現することは誰でも簡単に出来る。だが、その鋳型を作るのはまた話が違ってくる。


「でも他の属性の魔法を模倣すれば、初級の攻撃魔法くらいはすぐ出来るんじゃないかな」

「そうか……それにはまず他属性の魔法について勉強する必要があるな」

「そうね。それについては私に任せてよ! でもそれにはいろいろと準備も必要だし……私お腹すいちゃった。バージスに戻って何か食べましょう?」


 そうだな、とイグナールはモニカに返し、平原を後にしバージスへと戻った。その2人を遠くの茂みから除く影が揺らめく。


「みつ、みつ、みつけ……た」


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