act.2 最強の両親から生まれた無能
翌日、イグナールが目覚めると白いふかふかのベッドの上にいた。窓から降り注ぐ陽の光を浴び起き上がる。全身の痛みは消え去り、昨日の出来事は夢だったのかと訝しる。しかし、全身にまかれた包帯が夢ではないと教えてくれた。
「夢じゃないのか……パーティを追い出されたことも含めて……しかし何故?」
何故助かったのか、その答えは彼のすぐ近くにあった。イグナールのベッドの側に椅子を置き、彼の脚にもたれ掛かる形で突っ伏している女性、モーニカ・フォン・ハイデンライヒの存在だ。
イグナールのいた勇者パーティの一員であり、彼が冒険に出る際についてきた幼馴染である。彼女の家、ハイデンライヒ家は代々水属性の回復魔法を研究してきた貴族だ。その属性を現した海を思わせる蒼い髪を手で
「あ、目が覚めたんだね」
「あぁ、傷を治してくれたのはモニカなんだろ? ありがとう。世話を掛けたな……」
モニカは起き上がり微笑みかける。
「でも、まだ無理しちゃダメだよ。瀕死の状態だったけどイグナールの魔力量のおかげで完治したと思う。たぶん殆ど消費しちゃったからね。魔力が回復するまでは安静にしててね」
「……それよりも、見ていたのか? それとも知っていたのか?」
「……うん、両方」
彼の問いは昨日のディルクとのやり取りのことだ。
「お前は行かなくていいのか? 今日が出発だろう?」
「うん。でも私は元々イグナールが心配だったから付いて来てただけだし……だから私も抜けてきたの」
「いいのかよ? お前がいないとこの先大変だぞ」
「大丈夫よ。代わりの回復魔法使いを紹介したから。だから……イグナールが良くなるまで私が看るわ」
「モニカ……すまないな。俺が……俺がいつまでたっても弱いばかりに」
イグナールはモニカから目をそらし俯く。
「そんなことない! イグナールは頑張ったじゃない……確かに魔法は使えないかも知れないけど、あんなに努力して剣術を覚えたじゃない。十分戦っていけるくらい――」
「それは人間界までの話だ。魔界じゃ通じない……ディルクもそれをわかっていたから、俺をパーティから外した」
拳を握りしめ、歯を食いしばる。悔しさを抑えるイグナール。
「情けない……最強の炎魔法使いの父と最強の水魔法の母を持ちながら、どうして俺に魔法が使えないんだ! 何が常軌を逸した魔力量だ! 使えなければなんの意味もないじゃないか!」
その時、怒声と共にイグナールの体から紫電が迸った。
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