第145話 ダンジョン発見の一報
オーブで建てた家の周りにしっかりとした畑が出来た頃、島の探索に出かける姉妹のパーティーを見送った俺は、畑仕事をする両親に一声掛けてから家に入った。
闘技大会で敗れはしたものの大会で使用できなかったスキルをいつまでも放置しているのはもったいない。レベルが変動していない『召喚』系のスキルは、使い方を考える他に手の打ちようは無いが、ネクロマンサーに昇格した時に覚えた【ネクロマンシー】【死霊術】【アンデッド作成】には手を出していきたい。
以前は闘技大会が目前に迫っていた事もあって、作成したアンデッドは小柄なスケルトン一体であったのだ。闘技大会では召喚技能が使えないので、スキルを放置していたら戦争が始まって、国から逃げ出すハメになった。
「もしかして…戦争に参加して人間の骸を集めた方が良かったのか?」
そう考えて首を左右に振り、邪念を追い出す。
ネクロマンサーとしては正しい行いな気がしないでも無いが、家族の保護が最優先と行動したのは間違っているとは思えない。カルセドニーの情報なんかは掲示板頼りだが、これまで拠点としていた王都は廃墟となってしまったそうだ。
「王様に島を貰っていなかったら逃げ込める場所もなかっただろうし、その時は防衛戦に行っていたな」
たらればの話をしてもしょうがないと『アンデッド作成』スキルを起動して、ウインドウを覗き込む。
「アンデッド作成に必要な最低限の素材は、モンスターの討伐で大量に確保出来てるけど、ゾンビ系スケルトン系ゴースト系に分岐するのか…おっとゴースト系の必要素材が足りない。…魂?」
ゾンビ系やスケルトン系のアンデッドはドロップする骸から作り出すことが出来る。しかし、ゴースト系はそれを使用しない代わりに魂と名の付く素材が必要とされている様だ。
「持っていない物はしょうがないから、今はゴースト系を諦めるとして…」
ゾンビに良い印象を持っていない俺は、スケルトンを作り始めた。
「パズルみたいで意外と面白いな…別の生き物の骨と組み合わせられるのは有り難いけど」
アンデッド作成画面は、作成するアンデッドの特徴を選択する事から始まる。まずゾンビ系、スケルトン系、ゴースト系の中から作りたいアンデッドの種類を選択し、種類を選択するとアンデッドの体形を選択する事になる。
ゾンビ系やスケルトン系ならば、人型(小)人型(中)人型(大)人型(巨)動物型(小)と続き、ゴースト系はゴースト(小)であったり、キラーソード(ダガー)ゴーストガーディアン(革鎧)などバラエティに富んでいる。
その中でジンはスケルトン系人型(中)を選び、作成を行っていたのだが、モンスターを倒した時に手に入る○○(モンスターの名前が入る)の骸を画面の中にある素材投入をタッチして送り込むと、ランダムに骨と名の付く素材アイテムに変換されて表示される。その素材をアンデッドの基本となる初期位置のパーツと取り換えたり、余分なパーツを組み込んだりと本当にパズルの様だ。
ネクロマンサーの強みは作り出したアンデッドを大量召喚出来る事だと考えていたけど、一体のアンデッドをカスタマイズして強化するのも楽しそうだ。
≪スキル【アンデッド作成】のレベルが上昇しました≫
≪スキル【アンデッド作成】のレベルが上昇しました≫
≪スキル【アンデッド作成】のレベルが上昇しました≫
≪スキル【アンデッド作成】のレベルが上昇しました≫
「ふーっ、最初のスケルトンを改造するのが楽し過ぎて、あんまり素材なかったから大変だった。ゴブリンの骸からだと、やっぱり小さい骨が出るんだな」
改造スケルトンに素材を投入し過ぎた所為で、同じ人型(中)でも改造したスケルトンは、他のスケルトンと比べてもかなり高い耐久力と左右対称に40本の腕による攻撃力。そして、その重量を支え移動させる足をつぎ足しに足して生まれた分厚い脚。
これを召喚する時は、人に見られない様にした方が良いかも知れないな。
「あら…あなた面白い物を作っていねのね?」
「え?」
唐突に耳に届く、柔らかく穏やかな声。
慌て声のした背後に振り返り、声の正体を見止める。
「ふふふ、驚かせちゃったかしら。私はドロテアよろしくね…契約者様?」
「け、契約者だと?」
ドロテアと名乗ったその生き物は、幼い少女の容姿をしていた。長い黒髪に紫色の瞳を光らせ、黒く薄い一枚布で作られたドレスを纏い。楽し気にこちらを観察している。
「私が闇の精霊ドロテア。死してなお辱められる骸の呼びに引き寄せられてきたの」
「…」
骸のという事は、アンデッド作成がトリガーで現れたのか。それならば、彼女はアンデッド作成を罰する役割を持つのかもしれない。
「…沈黙は金、少なくとも愚者では無いようで安心したわ。警戒している所を申し訳ないのだけど……私は貴方を罰する事はないし、そんな権限もないのよ」
「…それは良かった」
アンデッド作成画面を閉じると、距離を取るべくゆったりと立ち上がる。
「…慎重なのは良い事ね。けど…」
ドロテアの姿を見失ったのだと、ジンが認識し部屋の中を見渡そうと首を僅かに動かす。その一瞬の合間にドロテアは今にも鼻先が触れんばかりの距離に姿を現した。
「お話をするのですから、お顔を見合わせていたしませんと」
「…っ!」
叫び声を噛み殺し、沸き上がった恐怖心を何とか抑える。
ドロテアの紫色に輝く瞳が、お前程度ならいつでも殺せると殺意より好奇心に支配された瞳で俺を見つめている。
「貴方はネクロマンサーでしたね。久し振りの新人さんなので私が直々に講習をと思ったのですが、こんなに怯えられては仕方がありません。口頭で手早く済ませてげましょう」
興味が無くなったという態度を隠す素振りも見せず【ネクロマンシー】と【死霊術】の扱い方を説明を始める。
「【ネクロマンシー】と言うのは本来、死体を動かし操るという物ではなく。死者の力を借りて予言や占いをすると言う意味なのですが、いつしか死者を操り思いのままに動かすと言った現代的な物に進化していきました。貴方が【ネクロマンシー】を極めた時、全ての死者は貴方にひれ伏すことになるでしょう」
「全ての死者という事は、死体をそのまま操ることが出来るようになると?」
「その通りです。しかし、それは遠い未来のお話です。いまは自分の作り出した死体人形を動かすのが関の山です」
「…」
彼女のが話す度に恐怖心が収まり、次第に落ち着いて会話が出来るまでに冷静になった。
「死霊術は本来【ネクロマンシー】の中にある技能なのですが、魔力を消費が多く扱いが難しいと別の技能になったのです。この死霊術は貴方で言えば、10体のスケルトンを使い潰して巨大な骨の手を生み出して操ったり、ゾンビを一つにまとめて巨大なゾンビを作り出すなんてことが出来るようになります。…ふふ、その顔。使い道を思いついた様ね」
「ああ」
「【アンデッド作成】は問題ないかしら?」
「ゴーストの素材を手に入れる方法が、まだ分かっていない」
「あら、それは大変ね。もちろん教えてげるわ♪」
全てを教え終わるとドロテアは、景色に溶けて部屋の中から消えて無くなった。
ドロテアの姿が見えなくなると、体が震え始め全身から冷やせが噴き出す。
「ッぐ!」
ステータスの開いて自分の状態を確認し、唖然とし迂闊な自分に呆れかえる。
「恐慌状態に魅了…道理で恐怖心や警戒心が薄れる訳だ」
何てことはない。ドロテアは恐怖に怯え竦むジンを見て、不安で泣いている赤子をあやすように魅了を使ったのだ。
「スキルの使い方が分かったのは良いけど…あー…何か恥ずかしい」
仰向けに寝転び天井を見上げる。
「…耐性スキルって大事なんだな」
≪地のダンジョンが討伐されました≫
≪ダンジョンが討伐された結果、グリモワール・オンライン公式ダンジョン紹介ページより、地、水、火、風、光、闇、各種ダンジョンの所在を確認いただけます≫
≪地のダンジョンが討伐によって封印の一部が崩壊しました≫
「まったく…退屈させねぇな」
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