第100話 IFストーリー 100回記念「モンスター・バトル・フロンティア」
「え、新作ゲーム?」
久しぶりにリビングのソファで寛いでいるところに思わぬ襲撃者が現れた。
「今度のは、モンスターを育成するシミュレーションゲームです!」
作者である。
「何の話?」
「今度のゲームは――――」
「それは、もういいから!」
思わず声が大きくなってしまった。冷静に対応しなければ、本編で無意味な窮地に立たされてしまう。
あれ?
本編ってなんだっけ?
「本当は次回書きたい話を考えていたんだけど…我慢できなくなりそうなんだよね!」
「おーい」
「だから、もう書いちゃおうと思ったんだよね。で、ジン君には、テストプレイをしてもらいます」
「えー」
良く分かんない企画に強制参加なの?
「勿論素体はVRゲームで、ジャンルは育成シミュレーション…RPG?」
「何故に疑問?」
「えーっとキャラメイクは、スキップしてー…まぁ、これで良いか長くなるし」
「長いの!?」
「はいはい、『アライン』を装着してーGOー!」
作者が何処からとも無く現れた『アライン』を装着させると、ジンは直ぐに意識を失った。
♪
暗転から立ち直ると草原が広がっていた。
「なん—―」
「ようこそ『モンスター・バトル・フロンティア』へ」
「うお!?」
ジンの死角――頭上から、女性が突然空から降って来た。
「ここは『モンスター・バトル・フロンティア』のプレイヤー専用マップ『アジト』です。この『アジト』では、所有モンスターの育成、卵の孵化、アイテムの作成、倉庫機能とプレイヤーの基本行動の全てを行うことが出来ます」
「へー『アジト』か…プレイヤー専用ってことは、他のプレイヤーも入ってごった返すのか」
「『アジト』はプレイヤー個人に与えられる施設です。他のプレイヤーを招待する事は可能ですが、許可なく勝手に侵入することは出来ません。運営でも原則侵入はしません」
「ハウジングシステムみたいなもんか…」
そう言って周りを見渡すと何かふと懐かしい感じがした。
「モンスターファ〇ム?」
「何方かと言えば、初代デジ〇ンワールドですかね」
「寿命は?」
「無限進化を基本コンセプトにしていますから、無いですね」
「無限進化…ア〇カリモン?」
「いえ、ミレニアム…アルカディ〇ンですかね?」
女は、こほんっとワザとらしく咳をする。
「今回はテスターという事で、色々省略して進行します。えーっと、先ずモンスターがいなければ話になりませんので、こちらをどうぞ」
≪ジンは『モンスター・エッグ』を手に入れた!≫
「卵だな」
「では『アジト』の機能を使って孵化させましょう。メニューから卵の孵化を選択してください」
女性の指示に従って、メニュー画面を開き卵の項目から、孵化を選択する。
メニューは、いつもゲームでやっているのと同じ様に表示させることが出来た。システムの基本は『グリモワール・オンライン』と同じなので、表示方法も共通しているみたいだ。
「モンスターの卵って、模様も何もないんだな…」
「正式にリリースする段階では、プレイヤーに対応して質問等を行い適した系統の『モンスター・エッグ』が贈られる事になります。モンスターの系統は、バージョンアップなどで追加される予定です」
「モンスター・エッグは一人何個貰えるの?」
女性はにっこり微笑むと会話を続ける。
「モンスター・エッグが贈られるのは、一人一個までになります。ですが、『アジト』内で複数のモンスターを育成することが出来ます」
「何体?」
「プレイヤーのランク次第です。今回は簡易版なので、説明をしてもシステムが機能することはありません。そろそろ、次に進みましょう」
「まぁ、そうか」
別にこの後継続してプレイする訳でもないのだから、使えない機能の説明を受けても仕方がない。
「さぁ、エッグを地面の上に置いてください」
「あ、ああ」
モンスター・エッグを置くと直ぐに変化は訪れた。
「今回は簡易版なので、孵化するまでの時間もアイテムも短縮です」
「…おお、卵にひびが入ってる」
ニワトリの卵が孵る映像は見た事があるのだが、やはり新しい生命の誕生というのはグロイ。卵だからまだマシな方だが、血まみれの動物が誕生する瞬間は慣れてでもいないと見ていて余り気分の良いものではない。
モンスター・エッグが割れたかと思うと、卵を覆うようにエフェクトが発生する。
何だかエフェクトが濃すぎて前が見えない。
「卵が孵るシーンが完成していないので、誤魔化してます」
「おい」
それで良いのかと問いたい。
「ギャギャ」
声のした方へ振り替えるとそこにはすっかり見慣れてしまった、緑色のモンスターが此方を見つめていた。
「ゴブリンか…」
ため息と共に声が出てしまうのは仕方のない事態だと言えるだろう。
「簡易版なので、モンスターは固定です。適正は関係ありませんよ」
それはフォローだろうか?
「生まれたモンスターに名前を付けましょう」
「ゴブの助」
「ではゴブの助を連れて、『エリアマップ』に向かいましょう。メニューの移動を選択してください」
「あいよ」
「移動先の項目が三つに分けて表示されているのが、分かりますか?」
「ああ、『アジト』『エリアマップ』『フロンティア』の三つだな」
「そうです。今回は『フロンティア』で遊んで終了ですが、先ずは『エリアマップ』の説明ですね。『エリアマップ』は、他のRPGなどで言う所のフィールドエリアになります。ただし何所までも歩いて踏破するフィールドとは違い、行き止まりのあるエリアマップである事を頭に入れて於いてください」
「そのエリアはプレイヤー共通なのか?」
「個別です。パーティを組んで協力しあう事は可能ですが、それ以外に他プレイヤーの介入はありません。『エリアマップ』で飛ばされたマップは、一部を除いてランダムに形成されるので飽きる心配がありません」
疑問に思う部分が出て来たので、質問してみる。
「一部?」
「チュートリアル用のマップやイベント用のダンジョンでしょうか、未定の部分が多い事は否定できません。では『エリアマップ』を選択してください」
「何か出て来たな」
『エリアマップ』を選択すると「侵入するエリアを選択してください」の文字と共に三種類のマップが、表示されている。
「ではチュートリアルマップを選択してください」
「へいへい」
三種類のマップの中で、一番上に表示されていたチュートリアルマップを選択する。
「お?」
視界が暗転した。
♪
暗転が収まるり視界が戻ると、そこはまた平原だった。
「フィールドを分けた意味って…」
「『アジト』の平原は、イベントやクエスト以外では戦闘が発生しませんからね。ああ、そうでした。『アジト』のレイアウトは変更することが出来るので、モンスターにあったレイアウトをすると良いでしょう」
「それで…『エリアマップ』では何をするんだ?」
チラッと戦闘とか聞こえたぞ。
「育成モンスターのレベル上げです。ゴブの助を好きなだけレベリングしてください」
「どうやって戦うんだ?」
「育成モンスターに命令を出して戦います。プレイヤーが直接戦闘する事はありません。精々アイテムを投げるのか関の山です」
「攻撃アイテムってあるのか?」
「御座いますが、今は在りませんので…」
ああ、はい。簡易版ね。
「おや、モンスターが現れました。ベビースネークの様です。育成モンスターに指示を出しましょう」
「…ゴブの助は何ができるの?」
「ゴブリン種の特性は武器の使用ができる事ですね。今はないので、殴る蹴るです。大丈夫です勝てます」
何とも頼りない特性だ。
ベビースネークは、手の平ぐらいの大きさの小さな蛇だ。
チュートリアルなので毒とかはないと思う…たぶん。
「ゴブの助、戦え」
「ギャ!」
ゴブの助はベビースネークを踏みつけている。
なんだか戦闘を観ているだけというのは、うずうずして如何な。
「ギャー!」
「戦闘が終わったようですね」
断末魔みたいに雄たけびを上げるゴブの助。
「この様に戦闘を繰り返し、レベルを上げて進化させます。では次は『フロンティア』へ行きましょう」
♪
「はい、『フロンティア』に到着しました」
「フロンティアか…確かに地方って感じだな」
畑を耕す老人や家畜の世話をする若い男、その男に縋り付いている子供は息子さんだろうか?
一際目を引くのは、町の真ん中に作られたスペースだろうか。それを除けば、のどかな田舎町といった風情だ。
「『フロンティア』について説明をさせて戴きます。メニューの移動から『フロンティア』を選択すると、ランクに応じた数の町や都市といったNPC(住人)の生活する場所に移動できるようになります。今回は簡易版なので、初心者の町に強制移動しました。移動先の『フロンティア』では、『ショップ』『クエスト屋』『闘技場』『オークション会場』の施設が使用できます」
「つまりランクが上がると行ける所が増えるのね」
「その通りです」
「じゃあ、施設の説明を頼む」
「はい。では『ショップ』から説明を致しましょう。この『ショップ』は名前の示す通り、アイテムの売り買いが出来る施設です。販売の幅は広く、『アジト』の設備を購入したり、倒したモンスターの素材を売却したりとお金が絡む時には訪れる場所になるでしょう」
「一つの店でそんなに買える物なのか?」
「『モンスター・バトル・フロンティア』には流通の概念が存在しません。『ショップ』の施設がある所に人が集まり町が出来ています。『ショップ』は古代遺跡の一種で、アイテムをお金を消費する事で異次元から取り出し、アイテムを異次元に押し入れるとお金が出て来る遺跡なのです。購入や売却は自分の所持品であれば、離れた場所のアイテムでも可能です」
「要は『アジト』内のアイテムを売れるのか」
「その通りです。但し『ショップ』の中に入らなければ、売買いは出来ません」
店の中に入らなければ、施設の利用とは言えないからな。
「次に『クエスト屋』では—―――」
「へー」
一通りの説明を受けた後、ログアウトをして現実世界に帰還した。
♪
「どうだった?」
作者である。
「闘技場は良いな…俺は自分で戦いたいけど」
「運動が苦手な人も楽しめるだろ?」
「もふもふ族が釣られそうだなっと」
「私は御免だがね」
「動物は嫌いか?」
「怪我したら、心配になるだろう?」
「好きなのか?」
「見てる分には。さてイフストーリーは此処までにしようか…反響によっては書くのを諦めるという事で…」
「じゃあな」
ジンの言葉が作者の耳に入る前に姿を消していた。
「あれ…俺何してたんだ…?」
そして、ジンの記憶も…。
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