第98話 牧場夫婦のゲーム日誌、その3

 どうも皆さんこんにちは、家事の合間にお邪魔しています。愛する夫と可愛い子供たちに勧められて、なんだか物騒な世界にやって来てしまいました。


 上の娘に何かしたい事はあるかと聞かれたので、家では危なくて出来ないガーデニングをやってみたいわと話すと「一応…生産?」なんて呟いて生産ギルドという場所に案内されました。ギルドの中は、腰位の背をした髭の生えた人や子どもの様な姿の人で賑わっていました。


「ようこそいらっしゃいました。こちら生産ギルド受付カウンターでございます」


 受付の方が丁寧な対応をしてくださるので、分からない事ばかりで不安の大部分が解消されました。代わりにという訳ではありませんけど、別の不安要素と出会う結果になりました。


「畑の貸し出しですか?」


「はい。夫と二人で、作物を育てたいのです」


「申し訳ございません。ここカルセドニーは港町でもあり、作物の育成に向いておらず。野菜などは別の町からの運搬か、隣国からの輸入で賄っておりまして」


「まぁ」


「ですので、畑と言っても…あ!」


 何かを思い出した様子で、カウンターの奥に引っ込むと、数分後に杖を突いたご老人と一緒に戻った。


「お待たせしました。こちら、私の祖父です」


「は、はぁ」


「初めまして、お嬢さん。ワシはスッテン・スピンダー。元庭師ですじゃ」


「祖父は以前にお城で働いていたのですが、年も年なので引退したんです」


「それでお嬢さんは、自分の畑が欲しいんじゃったかの?」


 ご老人の言葉にしっかりと頷き返す。


「はい、最終的には…ですけれど」


「ほほほ、そうじゃの実はと言えば、畑自体はあるのじゃ」


「あるんですか!」


「うんむ。じゃが問題があっての」


 この町にあるという希少な畑には、いったいどんな問題があるというのでしょう。


「場所じゃ」


「場所…ですか?」


「そうじゃ、塩から畑を守る為に壁が必要での」


 もしかしたら、ビニールハウスの様な物なのかしら。


「畑の為だけに作れるかと怒られたので、城の中に作ってやったのじゃ!」


 愉快だと小さくない声で笑う。


「まぁ」


「それでの。見ず知らずの信用できるかもわからん人物に城に自由に行き来させる訳には、やっぱりいかんわな」


「そうですよね」


 私だって知らない人が、家の中で畑を耕していたらすごく怖いもの。


「じゃから信頼を勝ち取らねばならん」


「はい?」


 お爺さん?


「つまりですね。ギルドのお仕事をする態度などを見て、信用できる方なのか証明して欲しいのです」


「仕事は…そうじゃのワシの手伝いでどうかな?」


「それなら、夫も一緒にお手伝いしても?」


「もちろんじゃ、一人で出来る作業が少なくなっても良いならの」

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