第86話 一人と二人と二人
一先ず領地の
「とにかく一旦カルセドニーに戻るぞ。アリサとアリマを無意に拘束する訳にはいかないからな」
「それでは、船を出します」
帰りの船を操るのは、行と同じでロックスに任せた。
クロエはモンスターが襲って来た時の為に船の周囲を警戒している。
「アリマの報酬なんだが…」
「あー、もう良いよ」
「だろうな」
アリマの報酬と言うのは、地竜の討伐報酬の事ではない。領地のドラゴンを説得して欲しいとお願いする時に提示した報酬の事だ。
「地竜の方が価値が有りますし…」
「そうでなくとも『フリーボス』だからな。絶対PKに狙われるな」
「そう言えば、PKプレイヤーの話題を聞かないんだよね。生産を含めて正規のギルドでは、犯罪者を識別する魔道具があるのだけど今の所デメリットしか無いんだよね」
まぁ、魔道具に引っかかったら、速攻で檻の中だろうからな。
「それでも、油断してはいけませんわ。ああいった手合いは、損得を考えない者が大半ですのよ。損得勘定さえ出来ていれば、小さなメリットで犯罪には走らないものですし」
しかし、小さかろうが大きかろうが犯罪には巻き込まれたくないものだ。
「ただメリットが全く無いとも考えられないんだよな…」
大体ゲームのリスクには、相応のメリットがある物だ。ギャンブル性と言ってもいい。だから課金ガチャを回すプレイヤーがいるのだ。
現実では兎も角、ゲーム内でプレイヤーに益がある『何か』が有る可能性がある。
「ああ、もうこんな時間」
「ホントだ。こんな時間にご飯食べたら、太っちゃうよー」
ご飯…夕食。
「…あ」
「「ん?」」
四人が同時に首を傾げる。
「夕食…まだだった」
明日の朝、怒られるのは覚悟しておこう。
船に揺られ、長い様で短かった船旅も終点に到着する。
「到着いたしました」
「ああ」
船がカルセドニーの港に到着する。
地面の上に立っていると安心感が湧いてくる様だ。アリサとアリマの二人も、心なしか表情に安堵の色が見える。
「…二人とは此処までだな」
「あ、うん。そうだね」
「私たちは、これで落ちますわ。また後日お会いしましょうジンさん」
二人のログアウトを確認して、振り返る。
「ロックス、クロエ俺も今日はこれで消える。スファレまでの案内と地竜との戦闘、協力に感謝する」
「いえいえ、私も久々にいい運動が出来ました。ジン殿」
「ドラゴンとの戦いは初めての経験でしたが、お役に立てたようで安心いたしました」
短いながらも別れの言葉を交わす。
「また縁があったら、また会おう」
その言葉を最後にログアウトを行う。
「次に会う時は…戦場かも知れませんね」
「そうですねぇ、敵でないことを祈るばかりですよ」
いつか再び彼らの運命が交差するその日まで。
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