第68話 広範囲魔法の3コンボ
「…さて、どうしたものか…」
現状を打開するには、ゴブリン奇襲部隊を叩きのめす必要がある。それを実行するには、俺の新呪文である広範囲魔法を使うしかない。
問題はどの広範囲魔法を使うかだ。
例の喫茶店で登録した魔法は、戦場で使った土魔法の他に風、闇、呪の魔法だ。その中で新しく登録した魔法の数は、6つ。
「…MP足りるかな?」
俺の頭に浮かんだのは、6つの内3つを合わせた連携魔法だ。
このゲームのシステムでは、複数の魔法を連続で発動する事が可能だ。もちろん呪文である魔法名を噛まず、間違えずに唱える必要があるが、その分消費するMPが多くなる。
「まぁ、やってみるか」
外壁から敵部隊の中心地にいるゴブリンキングを見下ろす。
ゴブリンキングは、何か大きな声で叫んでいる。
恐らくだが、ゴブリン軍の士気を上げる演説のつもりなのだろう。
「まずは…呪魔法。『フォグペスト』」
ゴブリンキングを対象に疫病の霧を発生させる。
この状態異常に掛かると、攻撃力以外のステータスが激減する。
「次に闇魔法…『ダークルーム』」
この魔法は、闇属性の結界を作り出す魔法だ。
MPを注ぎ込み、ゴブリンの奇襲部隊を外界と隔離する。
「悩みに悩んだ風魔法。『エクスぺンドウインドウ』!」
エクスぺンドとは、拡大する膨張するという意味がある。この魔法は、風を使って他に登録した魔法の効力を拡大する思惑を持って考えたものだ。
今回でいえば、結界内に閉じこめられた疫病の霧を拡散する。
他の組み合わせも試して見たいところだが、今日はゴブリンキングを如何にかしよう。
「…これで城門前の敵部隊は、全部疫病に感染した。後は、結界の中にいるモンスターを魔法で叩けばいいだけだが…」
MPの残量は後僅か、この状態では追撃の魔法を唱えるのは無理だろう。
だが、一度発動させた魔法の効力を発揮させるとなれば別だ。
それは例えるなら、リモコンのスイッチを入れるように発動させた魔法の状態を劇的に変化させる。
「『ダークルーム』発動!」
俺の考えた闇魔法『ダークルーム』は、ただ結界を作り出す魔法ではない。この魔法はいわば、魔法で作り出した罠なのだ。その効力を発動させる事で、広がった結界は形状を変え、その内側に無数の棘を作り出し、結界を縮小させる。
「潰れろ」
結界の中にいるゴブリン軍のモンスターは、結界によってその中心に追い込まれていく。逃げ遅れたゴブリンは、結界内側の棘に刺さり、そのまま中央まで引きずられる。
そして、結界の内側がモンスターで埋まり、押し潰され消滅していく。
これが俺の考えた
「…生き残りがいるな。まぁ、ゴブリンキングだろうが…」
わざわざ部隊を率いて来たのは、ゴブリンキング一体では外壁の攻略が困難だという事だろう。
残りのMPも僅かだし、ゴブリンキングとの戦闘は遠慮したい。
ポーションで回復したとしても、長く戦うのは難しいだろう。
「グゥ…」
一体生き残ったゴブリンキングは、外壁の上に立つ俺を睨み付けると来た時とは逆で、蜃気楼の様に姿が揺らめくと次第に見えなくなった。
≪称号『ゴブリンキラー』を獲得しました≫
「…ふぅ、以外と疲れるもんだな」
休憩していた筈なのに余計に疲れてしまった。
外壁に長居していれば、さっきの魔法を見ていたプレイヤーが集まって来るだろう。今の内に戦場を離れて、ログアウトするのが得策だ。
掲示板に書かれるのは、覚悟しよう。
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