第65話 開戦の告知
本日も晴天なり、といった具合の青空に眉を顰める。
「あー、朝か…眠い」
まことに残念な事だが、本日は登校日である。
俺としては直ぐにでも『アライン』を装着して、ファンタジーな電脳空間でレベル上げをしたい所だ。
ところで、起き抜けにベットの隣で片膝を折る妹の対処法を誰か教えて欲しい。
「兄上、朝にございます。既に朝餉の用意は出来ておりますので、身支度を済ませて…」
「お前は何時から武士になったんだ?」
たまに変な言葉遣いをしていたのだが、何だかいつもよりキャラが濃い。
「いえ、実は昨日ついに武器系スキル【刀】を取得したのです」
「へぇ、それで何で武士口調なの?」
楓が武士なら、朝食の用意をさせてる俺は城主か何かか?
「昨日のテンションが、そのまま残っているのです!」
その言葉でピンと来た。
「お前、徹夜したのか?」
「…さ、30分は寝ました!」
「最低でも2時間は寝ろ!」
朝の漫才はここまでにして、学校に行く支度を済ませよう。といっても俺は、大体の支度は前日の夜の内に終わらせておく派の人間なので、支度と言っても着替えて、顔を洗う位で終わってしまう。
リビングに行って、朝食を食べて腹を満たす。
「ごちそうさま!」
食べ終わると鞄を手に玄関へ、そして通学路を走って進む。
「ただいまー」
台所から、お帰りーと母さんの声が聞こえる。
「イベント、イベント」
机の上に放置されたアラインを装着すると、電源を入れてグリモワール・オンラインの世界に飛び込む。
ログインを終えるとその場所は、イベント開始の宣言がなされたカルセドニー城の中庭である。
「んー、掲示板の方でもイベントでお祭り騒ぎか…。あ、ゲーム微修正来てる。やっぱり、あんな方法は一度きりか…でもプレイヤーへの補填でイベント期間伸びそうだな」
昨日の貢献ポイント稼ぎの後、生産プレイヤーが受けるイベントクエストの変動を見ておこうと掲示板のある中庭に足を運んだのだ。
観察した限り、武器や防具の生産は常設。
ポーションなどのアイテムは、クエストが達成される毎に備蓄を確認していた。必要数が集まり次第このクエストは無くなるのではないだろうか。
調査クエストは良く分からなかった、何しろゴブリン軍は城壁から目視で確認できる。それ以上の調査となれば、ゴブリン軍に潜入して調べる必要がある。そんな事をすれば直ぐに見つかってしまうだろう。いったいどんなプレイをすれば、ゴブリンの言語を理解できるようになるのだろうか、調査といっても精々伏兵や援軍の有無を偵察するのが限界ではないだろうか。
「ん?」
いつも、一つしかない討伐クエスト。
それは、今も変わらない。だが変わっているものもある、そう変わっているのはその内容だ。
「へぇ、レベル上げは出来そうだな」
そう言い切ると新しいクエストを受注する。
これから始まるのは、ゴブリン軍とカルセドニーとの戦争だ。
開戦 ランク不明 イベントクエスト
報酬貢献ポイント
ついに開戦の時が来た、外壁付近に陣取る魔物の軍勢と戦が始まる。冒険者諸君には、傭兵として参加して貰いたい。健闘を祈る。
ファンタジー小説なんかでも、冒険者が国の要請を受けて戦争に参加する事は珍しくない。それを思えば、イベントクエストとしても成り立つだろう。
昨日までやっていたのは、戦争前の準備だった訳だ。
俺の予想だと今回のイベントは長くなると思っていたのだが、思い違いをしていたのか直ぐに終わりそうなテンポの良さだ。
「まぁ、長時間の戦闘はプレイヤーには酷だろうしなぁ…」
以前に軍としての訓練を受けていないとか疑問に思ったものだが、今回はどうなることか。
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