第61話 イベントへの秘策?

 俺は今、城内の中庭で腕を組み掲示板を睨んでいる。


 誰にでも出来る様な単純な運搬クエストは、相応に貰えるポイントが少ない。


 武器製作の様な生産系のクエストは、レア度、品質、個数などで得られるポイントが決まっている様だ。


「…ふむ」


 鍛冶スキルで武器を作るにしても俺のスキルレベルでは、たいして数を揃えられないだろう。素材がどうなるのかも分からない。


 結局の所、討伐で稼ぐ方が確実な訳だ。


「…仕方ないか」


 何か他にポイントを得られる方法があるような気がするのだが、まったく思いつかない。


 このまま掲示板を睨んでもしょうがないから、外に出てゴブリンと戯れる事にする。


「ハァ」


 何体目かのゴブリンを切り捨てて、ため息が漏れる。


「『サモン』『ダークピッド』」


 ゴブリンゾンビでMPを回復しつつ、連戦を図る。


「ギギギ!」


「ゴブリンナイト…5ポイント!」


 剣を構えて突っ込んできたゴブリンナイトを大鎌で切り伏せる。


 体制が崩れた所に、ゴブリンゾンビ達がゴブリンナイトに集まり攻撃を浴びせ続ける。ゴブリンナイトが光になって消滅するとポイントが追加された。


「…ナイトも弱くはない」


 ゴブリンは色々なジャンルで、多様化したモンスターだ。


 簡単に想像しただけでも人が着く事の出来る職業の数だけ、ゴブリンシリーズのモンスターも増える事だろう。


「ゴブリンキングも強いだろうしな…」


 ジェネラルゴブリンだけでもパーティを組む必要があるのだ。それよりも上位のゴブリンキングは、ちゃんとした連携が求められるだろう。


 ソロには厳しい話だ。


「それにしても、ゴブリン軍はどうして動かない?」


 イベントだからと言われればそれまでなの話なのだが、こういった軍事行動の様な組織的な行動には、何かしら理由がないと納得できない。


 性分なのだろうな。


「…軍が動かないのは、待機指示が出ているからだろうけど…でも何で?」


 ブツブツと独り言が口元から零れて行く。


 行かんな、集中して何か考え事を始めるとつい独り言を口走ってしまう。


「ギギギ!?」


「おっと!」


 危なかった…魔法か、鳴き声に気付けて良かった。


「火魔法か…まだ持っていなかった魔法だな」


 一応、所得可能スキルに火魔法はある。


 火力を求めるなら、思い付くのは火魔法だろうか。


 今まで取得していなかったのは、火魔法を取得する理由が無かったからだ。


「シッ!」


 大鎌で足を振り払い、ゴブリンゾンビに任せる。


「土魔法の時は、雷対策だったよな…」


 アレは確か、ラージラットとの戦いの時だったな。


「あの時は、警備隊が全員麻痺になって…あ」


 そうか、何も丁寧に一体一体相手にする必要はないんだ。


 試してみよう、ランキングを駆け上がる為に。


「…作ってみるか、広範囲魔法を!」


 そうと決まれば、安全な場所に移動しなければ。


 魔法を登録するには、時間が掛かるかもしれない。


 土魔法の時は、水気を吸い取らせるだけが目的だったから適当でも良かったが、今回は広範囲魔法の登録だ。余り適当な事は出来ない。


「邪魔だな…『ダークノア』」


 俺の持つ魔法に広範囲に威力を及ばせる魔法はない、精々が『ダークノア』『ウインドストーム』の範囲攻撃止まりなのだ。


 目指すのは広範囲、戦略級、戦術級魔法の登録である。


 倒しきれないゴブリン達は、召喚モンスターに任せて街の入り口に戻ろう。


「ふぅ、疲れた」


 追いかけて来たゴブリンを蹴散らして、街に戻る。


 自然に言葉が出る。


 適当に喫茶店にでも入って、ケーキを注文しよう。

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