第24話 脳科学研究所
「父さん!」
俺は、国立脳科学研究所に来ていた。
我が父が勤める研究所である。
「おお…仁、来ていたのか!」
「うん、始業式も終わったし頼みたいこともあったからね」
ちなみにこの国立研究所は関係者以外立ち入り禁止である。
「それは良いが、偶には顔を出せ。所長が仕事抱えてて大変なんだ」
「ああ、うん。気が向いたら」
つまり俺は関係者という事だ。
未成年の為伏せられているだけなので、所内では不自由という訳でも無い。
「で、頼みってなんだ?」
「『リンクス』が欲しいんだ」
父さんは不思議なものを見るような目で、俺を凝視する。
「全品予約済みだが、追加発注させよう。でも『アライン』を持っていただろう?」
「楓がゲームをしたがってね」
ふむ、と何か考え込むような仕草をする父。
「あの子が、何か強請るなんて珍しいな…。娘の為だなんとでもしよう」
「あ、三台な」
「分かってる。あの子たちの分だろ?」
「うん」
わかっているなと頷き返す。
「次いでだし、私と母さんの分も頼もう」
「え?」
「私は忙しくて中々難しいが、母さんなら時間の都合も付きやすいだろうし」
「まぁ、母さんもゲーム好きだから良いと思うけど」
親子そろって職権乱用である。
「あ、私は『アライン』持ってたか…」
「丁度いいから、家族全員分と二台揃えようか?」
「でも『アライン』は…」
言葉を遮り、続きを話す。
「脳波測定に丁度いいから。承諾貰えば法的にも問題はないし、それに楓にだけプレゼントをやるのは良くない」
「そりゃ…研究データには役に立つかもしれないけど」
「大体、何の理由もなく受け取るような性格してないから。みんな」
あ、一人いたっけ、元気っこが。
「まぁ、VRが脳に与える影響を調べる人員はいくらいても良いが…」
「考えられる悪影響は『アライン』の基本機能でカットされる。『リンクス』もそうだ。なんなら…使用前にお前がチェックするか?」
いいや、とワザとらしく首を左右に振ってみせる。
「パッケージ前に確認する。確認後包装して、持ち帰るから心配ない」
「モニターのデータは、私がロックを掛けたうえで研究所のデータベースに保存する。加えて私の端末からリアルタイムで確認できるようにしておく」
「それだけやれば、言い訳が立つだろう」
研究の為と空気を漂わせておきながら、結局は私利私欲である。
「運営側には、モニターの事を伝えておかなければな…」
「別に良いんじゃないか?」
「そうか?」
「まともな運営してるかチェック出来るしな」
俺の言葉に、それもそうかと頷く父。
「家に帰る時間が無くても、ゲームなら楓にも会えるだろ?」
「…ああ、そうだな!」
代わりに睡眠時間が削られそうだが、適度な所で同僚の方に止めてもらおう。
「じゃあ、今日は帰るな」
「ああ、発注は任せておけ」
俺が帰った後、俺が来ていた事を知った所長に怒られたそうな。
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