第一章 正式版

第22話 日常へ

「起立!」


 今日から新学期が始まる。


 高校生ともなると、強制的に自立性を求められるようになる。


「礼!」


 何が言いたいのかというと眠いのだ。


 『グリモワール・オンライン』のβ版が終わって、また趣味に走っていた。


 詰まる所、ゲームである。


「えー、今日から君たちは二年生になる訳だが…」


 どこの学校でも教えられる生活態度にそう違いはないだろう。


 一部、頭のおかしい教育者(狂育者)がいるが、何処でも洗脳に近い形になるものだ。


 そうなると反発が当然の様に感じるから不思議だ。


「新一年生も入ってくるから、情けない姿を見せないようにな」


 ホームルームが終わり、担任が退室する。


 重い瞼を開き続ける理由が無くなったので、早速眠りにつく。


 周りのざわつく声が聞こえるが、気にしない事にする。


「『グリモワール・オンライン』の正式版あと三日だぜ」


「俺、『アライン』もってないんだよ」


「発売されてから、まだ三年だしな。安全性の管理だとかで、生産が少ないんだよなー」


「ゲーミング仕様の新しい物が、発売されるらしいぜ」


「マジか…待ってみるか…?」


「何かゲーミング仕様は、ゲームに必要な機能以外は無いらしいぜ」


「完全にゲーム機だな!」


 何やら愉快な会話の様だが気にしない。


 学校で浮いているのは理解しているつもりだ。


 精々存分にボッチライフをエンジョイするのだ。


 誰にも邪魔されずに眠れるのは、ボッチの特権なのである。


「俺テスターだったんだけど、あのイベントは無いわー」


「巨大イカの襲来だっけ?」


「フリーボスな。唯でさえ、テスターの数少ないのに固くってよ」


「何人?」


「確か…300人だったかな?」


「うわ、倍率ヤバそう」


「当たるのが奇跡だよな」


 俺…応募すらしてないんだが、姉さんとんでもないな。


「ちょこっとパーティ組んだけど結局倒せずじまいでさ」


「街崩壊イベントだろ?」


「正式版が既に不安で一杯なんだよ~」


 これ以上は、意識が保てなくなり。ゆっくりと眠りについた。

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