第11話 魔女王蜂

 魔蜂の森で、数度目の戦闘を終え息を吐く。


「はぁ…流石は虫、数が多い」


 俺はRPGで雑魚戦を回避しないタイプの人間だ。避けてレベルが足りないのでは意味がない。


 VRはそこが曖昧で、ダメージが入れば後は回避と攻撃の繰り返しで勝利できる。


「さすがになぁ…」


 しかし、躱すにしても攻撃するにしても、運動不足気味の俺では一体が精々だ。複数体の蜂が来ては、勝ち目が薄いだろう。


 ダンジョンにセーフティエリアも無いだろうが、ここは警戒をしながら所持品とステータスを確認する。



薬草 素材 レア度1 ×106

 どこにでも自生している草、薬の材料になる。


毒草 素材 レア度1 ×53

 どこにでも生えている草、よく薬草と間違えられる。薬の材料。


日当草 素材 レア度1 ×3

 太陽を求めて健気に待つ草、陽のあたる場所に置くと直ぐに枯れる。


赤玉キノコ 素材 レア度1 ×9

 危険な色合いのキノコ。見た目に反して美味。


ショートビーの毒針 素材 レア度1 ×8

 ショートビーの小さな毒針。素手で触るのは危険。


ビックビーの毒針 素材 レア度1 ×6

 ビックビーの毒針。素手で触るのは危険。


探索者のベルト ベルト レア度2 耐久値700

 体力+1 器用+2 アイテムバック容量+1

  探索者愛用のベルト。備え付けの小袋が採取を手助ける。



 運よく宝箱は発見できた。ベルトが入っていたが防具は装備していなかったし、プラス作用しか無かったので迷わず装備した。 




名前  ジン

性別  男

Lv7

HP  42

MP  57

筋力  11+1(12)

体力  11+1(12)

器用  21+4(25)

精神  16

知力  16

俊敏  6

運   12

ボーナスポイント 6



グリモワール 収集のグリモワール(グロノス)


装備     白鉱のナイフ 探索者のベルト


所持金    800コル


スキル    【鑑定Lv4】【魔書術Lv7】【採取】【採掘】【調薬Lv1】【幸運】


称号     『始原の魔道』『第87階位の魔導書』



収集のグリモワール

名称  グロノス

階級  第87階位

タイプ 万能

能力  【コレクションカードLv3】



 数度の戦闘でレベルも上がった。こうなると素材も惜しくなる。どのみちボスの顔を見て行かないと気が済まないから問題ないが。


 ふと魔書術の欄を調べてみる。


 増えている。


 アーツではないので技能だろうか?



魔装化

 グリモワールを武器・防具・道具に作り変える。※生成先はランダム。生成後変更不可



「…これは、また」


 面白い、ニヤリと口元を歪ませて魔装化を発動する。



                     ♪



「へー、コイツがボスか…」


 蜂のボスは女王。定番だがVRでは、侮れない。


「試し切り…かな?」


 俺はそっと大鎌を撫でた。


 魔装化で生成した大鎌は、ある程度大きさの変更が出来る。元がグリモワールなだけに俺の意志を色濃く反映してくれそうだ。


「ギシャアー!」


 俺の姿を認識した女王蜂は、甲高い声を撒き散らす。


 ボスとの戦闘エリアは開けた場所になっていて、身を隠すことが出来ない様になっていた。潜伏系のスキルがあれば話は変わってくる可能性もあるが、今の俺には関係ないことだ。


「ギギ!」


 女王蜂の声に反応してか、どこからともなくビックビーよりも一回りは大きいであろう蜂を呼び出す。


「増援二…女王が大きすぎるな」


 この女王蜂、おおよそビックビーの二倍の体積を誇る。


「ボス専用のスキルか何かありそうだが…考える時間は貰えないか!」


 登場と同時に突進を始める近衛蜂。回避をしようにも大鎌では、回避がしにくいので受け流しを心がける。


「ギシャアーーー!」


 女王蜂が大きな爪を振りかぶると風の刃が俺に向かって飛ぶ。


「グッ!?」


 回避を早々に諦め風の刃は防御を選択する。それでもダメージはHPの三割を悠々と削り取った。


「…痛っ、どうしたもんかな」


 近衛蜂との連携を無視した攻撃で此方も隙を突かれたが、近衛蜂は二匹とも風の刃で切り裂かれてしまった。もしかしたら、二匹で軽減されてこのダメージなのかもしれない。


「ギシャアー!」


 最初と同様の声を発すると再び近衛蜂が出現し突撃を開始する。


「これは…増援か、それとも召喚?」


 このまま繰り返されては勝ち目がなくなる。低い可能性を掴み取るしか方法は無さそうだ。


 すなわち。


「女王!」


 近衛蜂の突進を上手く誘導し、女王蜂との距離を開けさせて突貫する。


 飛び上がり大鎌を思いきり振り下す。ボスだけあって固いようだが、全力で攻撃に集中すれば無理ではないだろう。


 問題なのは、近衛蜂だが。チラリと後ろを見ると近衛蜂が背中を狙っているのが見えた。


「っと!」


 辛い。回避だけに専念したいぐらいだ。


 まぁ、間違いなくパーティ用だし推奨レベル8の六人フルパーティか?


 そこまで考えて、首を振る。戦闘中に他のことを考える余裕はない、集中しなくては。


「ギギギ!」


 また距離を置こうと大鎌を叩きつけて走り出した。すると近衛蜂の周りが緑色の膜に蓋われたかと思うと急に速度を上げた。


「身体強化…いや、魔力付与エンチャントか!?」


 俊敏強化のエンチャントだとしたら、風属性だろうか?


「…厄介な。痛!?」


 再び切り飛ばされる風の刃を受け損なう。


 いった傍から考え込んでいたせいで、痛打を受けてしまった。残りHPは二割といったところだ。


 幸いHPはまだ残っている。


「ギシャアーー!」


「あーあ、勝ち誇ってやがる」


 今ので巻き込まれて近衛蜂は一匹、追加の蜂はいない。もしかしたら補充は全滅後のみで生き残りがいると発生しないのかもしれない。


「HPも少ないし、狙うなら今しかないな」


 特に切り札を隠し持っている訳ではない。相手が最低戦力の今を逃す理由はないというか他に隙らしい隙がないのだし。


 女王蜂を切り付け走る。今できるのは、ヒット&ウェイならぬヒット&ランだ。


 蓄積ダメージを甘く見てはいけない、水で岩に穴を開けるが如くひたすら時間をかけてやる。傷を付けるのはナイフも有るのだしそう難しい事じゃない。


「さぁ、持久戦の始まりだ」



                      ♪♪



≪魔蜂の森ボス『クイーンズビィー』を倒しました≫

≪レアドロップ『女王蜂の耳飾り』を入手しました≫

≪初回討伐報酬『蜂族のカード』を入手しました≫

≪初単独報酬スキル『風魔術』を入手しました≫

≪討伐MVP報酬スキル『識別』を入手しました≫

≪ジンのレベルが3上昇しましたボーナスポイントを振り分けてください(残りボーナスポイント9)≫

≪称号『魔蜂の打倒者』を入手しました≫

≪称号『ダンジョン攻略者』を入手しました≫

≪システムメッセージ:ただ今ダンジョン『魔蜂の森』がクリアされました。よって以下のシステムが解放されます。…『フリーボス』『フィールドボス』『ユニークボス』詳しくは公式ページより参照≫

≪おめでとうございます『グロノス』の進化条件をクリアしました。グリモワールのステータスより進化先を決定してください≫


 今日はもう疲れたんだけどな…。

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