第2話 キャラクターメイキング
何もない真っ白な空間がただ広がっている。昔の映画でこんなシーンがあったなと、どこか他人事のようにただ視線を漂わせている最中、上空から光の玉がゆっくりと舞い降りて、弾けた。
強い閃光が瞬くとそこには、光の玉と入れ替わるように、蝶の羽を背負った小人が姿を現した。
ある種ファンタジーにはお約束になっている
「これより『グリモワール・オンライン』プレイヤーキャラクターの制作に移ります。初めにプレイヤーキャラクターの名前を決定してください」
空中で一切の挙動がない妖精は、まるで合成されたような無機質な声で、ゆっくりと確実に道案内を始めた。
「名前か…そういや考えてもなかったな」
ログインして直ぐに姉と合流する予定だから、自分と分かりやすい名前が望ましい。
「ジン…っと」
「プレイヤーネーム『ジン』でよろしいですか?」
薄い立体パネルが浮かび上がり、YES/NOの文字が浮かび上がる。
YESをタッチするとパネルが消える。
ゲームが開始されて間もないからか、名前が重複して使用できないような事態は避けられた。これだけでもゲーム開始日にゲームを始める価値がある。
「続いて、容姿の決定を行います」
妖精が言葉を発すると円形に開いた床の穴から、スッと無表情の自分が姿を見せる。
「怖っ…」
「ご自身の姿が投影された現身です。現実の体をベースに『グリモワール・オンライン』における貴方自身の容姿を決定してください」
妖精の説明では体アバターを一から作ることも可能な様だが、姉が待っているのであまり時間を掛けてはいられない。時間が惜しいので、リアルの容姿の髪と目の色を変えるだけで我慢しよう。もしかしたら顔を変更できるアイテムがあるかもしれないし。
「髪は白に近い灰色…目は…赤で!」
時間の都合で、髪と目の色を変えただけではあるが、それでも元の自分と比べると印象がかなり違ってくる。
黒目黒髪は日本人の典型的な色だとは思けれど、自分がそれ以外の色に変わったところなど想像したことも無かったな。
「それでは、ステータスの設定に移ります。基本ステータスを元にボーナスポイントを振り分けてください。一度確定すると基本的に振り直しは出来ないので、ご注意ください」
言い終わるやいなや、仁のステータスがウインドウに表示される。
名前 ジン
性別 男
Lv 1
HP 20
MP 20
筋力 10
体力 10
器用 10
精神 10
知力 10
俊敏 5
運 5
ボーナスポイント 20
グリモワール 不明
装備 なし
所持金 0コル
スキル なし
称号 なし
性別はゲームの筐体である『アライン』によって、判別、固定されているらしい。
ネカマ、ネナベは、システム的に出来ないのかも知れない。とはいえ、自分が女になりたいといった願望は持ちわせていないので、俺には正直どうでもいい事だけど。
『グリモワール・オンライン』のグリモワールは魔導書の事で、これにも『アライン』の各種センサーを含めて、諸々の機能を使って選出されるのだそうだ。
ボーナスポイントは20か、どう振り分けたものかな。
♪
色々とあーでもない、こーでもないと考て振り分けた結果、俺のステータスはこうなった。
名前 ジン
性別 男
Lv 1
HP 30
MP 50
筋力 10
体力 10
器用 20
精神 15
知力 15
俊敏 5
運 5
ボーナスポイント 0
グリモワール 不明
装備 なし
所持金 0コル
スキル なし
称号 なし
姉さんと一緒にゲームをプレイする事を意識して、生産に関わりそうな器用に10ポイントを振ってしまった。魔法を使った生産技能があるかもしれないとも思って、精神と知力に5ポイントずつ振り分ける事にした。
試してみた感じだと各ステータスの割り振りで、HPとMPの最大数が決定しているみたいだった。ボーナスポイントへの振り分けが、どのステータスに影響を与えるのか気になったので調べてみた
・筋力 HPを2上昇
・体力 HPを3上昇
・器用 HP、MPを共に1上昇
・精神 MPを2上昇
・知力 MPを2上昇
・俊敏 HPを1上昇
・運 HP、MPをランダムに1上昇
「現在のステータスで確定しますか?」
全てのボーナスポイントを振り終えるとまたYES/NOのウインドウが現れる。
そのままYESに触れるとステータスウインドウと共に消えた。
「最後にスキルの設定となります。5種類の中から一つスキルをお選び下さい」
「…5種類って…ちょっと少なくはないか?」
新たに表示されたウインドウを眺める。
「えーっと剣術、感知、隠蔽、鑑定、採取?」
うーん、どれもパッとしない。
それ以前に魔法がない。いや、魔術かもしれないけど。
この中なら鑑定か採取だな。両方欲しいけど、うーん。
≪スキル【鑑定Lv1】を獲得しました≫
アナウンスと共にステータスのスキル欄に【鑑定Lv1】が追加される。【鑑定】を初期スキルに選んだのは、採取しても何か分からないなら無駄だなーっと思ったからだ。
町だったり拠点になりそうな場所には鑑定所なんかがあるかもしれないが、鑑定するにも料金が発生するだろうし、一度や二度ならともかく序盤に多用するのは厳しいだろう。
「以上でプレイヤーキャラクターの作成は終了となります。なおプレイヤーキャラクターの削除、作り直しはβ期間中は不可能ですので、ご了承ください」
最後に言うあたり、運営の性格の悪さが窺い知れるな。
「支度金として2000コルを贈呈致します。それでは良いゲームライフを」
妖精のその声が聞こえなくなると暗転した。
あれ…チュートリアルは?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます