三浦くんからの招待状
あれから中川くんは一層ぼくのことを敵視するようになった。教室を歩くときには必ずぼくの机にぶつかるし,下駄箱の靴は必ず場所が変えられてある。そのうえ,クラスの男子に「コウシは佐藤のことが好きなんだ。だから最近一緒にいるんだ」なんてでたらめを言いまわしている。
ぼくとしてはめんどうなことはやめてほうっておいてほしいのだけれども,机にぶつかっておきながら骨盤の方をさすっていたり,隠した靴は必ず周りを見ればわかる位置においていたり,好きな子に声をかけられなかったりするところとかなかなかかわいところもあるのだ。
今もまた中川くんは右手と右足を交互に出しているような歩き方で肩を張って歩き,ぼくの机にぶつかっては横目でこちらをちらっと見て教室を出ていった。金魚のフンを連れて,フンでもしに行くのだろうか。ひげダンスの人のように歩きながら。
「大丈夫?」
三浦くんと佐藤さんがぼくの席にやってきた。
「ほんと感じ悪いよね。わざとぶつかってきちゃって」
「きっとコウシくんと仲良くなりたいけど,上手く言葉に出せないんだね」
二人は口々に僕を慰めてくれた。まったく気にしていないぼくとしてはそのようなフォローは必要ないのだけれど,余裕をみせるために「中川くんはかわいいところがあるんだ」と言った。何だか大人げないかなとも思ったけど,その辺の振る舞いがぼくの至らないところだ。
「そういえば」と三浦くんが口を開き,
「この前のことをお母さんに話したんだ。ぜひうちに遊びに来てほしいって。友達といえる人なんていままでいなかったし,家で学校の友達のことを話すことなんてなかったから嬉しかったんだと思う。コウシくんと佐藤さんに会いたいって。良かったら二人ともうちに来ない?」
と照れ臭そうに言った。ぼくと佐藤さんは喜んで三浦くんの家に遊びに行くことにした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます