第23話 クリスマスとはなんですか?1

 あれはロビンが5歳になった冬。

 寒さ厳しい季節になり、外は轟々と風が吹き今にも雪が降りそうだ。ケヴィン様はガタガタと暖炉の前を陣取って震えている。


「ケヴィン様、大丈夫ですか?」


「大丈夫じゃないわよ!寒いわよ!!凍るわよ!エアコン欲しいわよっ!!」

 と泣きそうだ。


「エアコンとは?」


「前世の暖房器具よ!

 電気って言うので動くのよね。部屋中温風が出て直ぐに温まるのに!


 この世界はエアコンが無い!!」

 と更にケヴィン様は言う。そんな便利なものがあるのね。


「冬は嫌いだわ、外なんか出たくもないわ」


「領地の視察とかありますよ」


「ひぃぃぃぃーっ」


「大雪が降ったら、雪掻きの手伝いも」


「いやあああああああああー」

 と震える。


「カイロもない世界でどうやって暮らすのよ!もう嫌、ほんと!」

 とブンブン首を振るが、ふとケヴィン様は何かに気付いた。


「そうだわ、私の前世を知るエルなら、付き合ってくれるかしら?

 もう直ぐ、クリスマスの時期だもの!!」

 と言う。


「クリスマス?何ですか?それは」

 と聞くと


「ふふふ、クリスマスと言うのはね!赤い服を着た髭のジジイが子供達にプレゼントを配るイベントの日よ!」

 と言う。赤い服を着たジジイ…。


「な、何故赤い服を着る必要があるのですか?」


「え?そ、そんなの知らないわよ!」


 クリスマスと言えば、

 赤い服着たサンタクロースって言う|爺さん(じいさん)が、


 トナカイを連れて空飛んで、煙突から侵入して、寝ている良い子にプレゼントを置いていくのよ!」

 と言う。


 え?


 やだ、怖いわ。見ず知らずの赤い服を着た怪しいお爺さんが煙突から侵入して寝ている子供に怪しいものを置いて行くなんて!なんなのそれ?


 私の困ったような顔を見てケヴィン様は


「あのね、まぁ、それは物語の中の話で、実際には居ないんだけど、


 まぁ、その話を元にしてね、実は親がサンタに化けて、寝ている子供にクリスマスプレゼントを置いておくわけよ。


 そして次の日に起きたら、枕元にプレゼントがあって。子供は大喜びと言う感じのイベントなのよー」

 と言う。


「まあ、それなら不審者じゃなく両親からと言うことでとりあえず安心ですわね」

 と言うとケヴィン様が死んだ目になり、


「いや、もうちょっと夢のある話なんだからね?サンタクロースを不審者扱いしないでくれる?


 あ、後、モミの木に飾りつけてクリスマスツリーにしたり、クリスマスは家族や恋人と過ごしてご馳走なんかを食べたりね、楽しいイベントなのよ」

 とにこにこしながら言う。

 この世界にもモミの木はあるが、あんな大きな木、どうやって持ってくるのかしら?


「エル…。

 あんた、モミの木はどこから持ってくる?とか考えたわね?」


「あら、正解ですわ」


「確かにねー。本物はちょっと無理よ。

 だから前世では、偽物のおもちゃみたいな木を作って飾っていたわ。キラキラして綺麗なね?


 あ、でも、無いわ。電飾が。そもそも電気がないから、チカチカキラキラできないわ…」

 と一気にまた死んだ目になった。


「デンキと言うのは無いから無理ですか…」

 と言うとケヴィン様は


「電気無くても、飾りつけるだけなら、何とかなるかしら?紙に絵を描いてあげる」

 とケヴィン様は紙にクリスマスツリーやサンタクロースの爺さんまで描いた。


「これは!想像していたより、なんか、良いですわね!」

 サンタクロースが可愛く描けているしツリーも飾りつけられた絵だった。


「色があればわかりやすいけど、絵の具しか無いもんね。時間かかるし」


「不審者だと思っていたお爺さんが、こんなに可愛いから安心しました。この方は良い方なのですね」

 と言うと呆れられた。


「不審者から離れなさいよ…」


「ご馳走はケーキとチキンが定番かしら。あ、欧米では七面鳥、ローストターキーね」

 と何か楽しそうだ。絵もついでに描いて説明してくれる。段々とクリスマスがわかってきた。


「面白そうでは無いですか?

 ロビンにしてあげたら、喜ぶかもしれませんわ」


「でしょー?絶対喜ぶわよ!!」


「でも、ロビン、何か欲しいものあるかしら?」


「それはお任せください、母親である私が、それとなく聞いておきますわ!」

 と私は胸を張る。


「じゃ、ご馳走やサンタの服は、私が料理長や仕立て屋にこっそり頼んでみるわ!後はツリーね…」

 クリスマスツリーをどうするかで悩む。


「意外とツリーの飾りって、素材からしてこの世界で入手困難かもだわ」


「でも、絵の様子だと、天使やサンタクロースの小さな人形が、ぶら下がっているので、これも裁縫で縫って仕舞えば良いかもですわ」


「その手があったわね!!うん!裁縫で星とかも作れるわ!!それでいきましょう!!」

 とウキウキとケヴィン様は、要らない布やらを使用人達からかき集めて綿を詰めて、私と一緒に飾り付けを作り始めた。


 しかし、壊滅的に裁縫が下手くそだったので、ケヴィン様は死んだ目になっていた。天使の腹から綿が飛び出してグロい感じになり、天使は完全に死んでいたし、トナカイやサンタも同様に気持ち悪い感じになって、飾ると怖かった。


「前世、柔道部だったし、裁縫なんて、授業で他の子に任せてたりしたから…」

 と言い訳のように言っていた。


 因みに木は、庭に生えている、まだ幼い木を引っこ抜いて、家の中に引き入れた。ロビンが5歳にしておかしなことをしている両親と、飾られている気持ち悪い人形がぶら下がっているのを見て


「な、なんなの?

 何してるの?怖い!気持ち悪いよ!何かの儀式ですか!?」

 と呟いていた。

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