第11話 婚約者は朝が弱いです
朝私は違和感を感じて目覚めた。
重い…。
と思ったら美しい男の人の顔があり眠っていました。私の婚約者のケヴィン様です。
昨夜のことを思い出し、あら?バリケードは?と思っていてもクッションが見当たらない!
そもそも寝相が悪すぎるんです!この方!!
しかも私を抱き枕にしてますわよね?
思わず赤くなりますが問題なことにまた手が私の胸を掴んでおります!
引っ叩いて起こして差し上げましょうか?
と手をあげたらムニャムニャと寝言で
「エル…エル…可愛い…す…き…」
と言っていて一気に固まりましたわ。
ななな、何故私の夢を!!??
いえ、昨晩確かに悩みながらも好きだと思うとおっしゃられましたが!!
私はドキドキしてこのままでは身が保ちませんわ!とにかく逃れなくてはと毛布を手繰り寄せてこれを代わりに抱きしめさせようと試みます。
ソッと手を胸から剥がして代わりに毛布を渡します。う、上手くいきましたわ。
ゆっくりと起こさないよう離れようとしていたらいきなり死んだ目が開き私はビクッとしました!!
「ひっ!おは、おはようございます!!ケヴィン様」
と一応言うと彼は微動だにしません!
ええ??
ひらひらと手を振りますが反応なし。
「ケヴィン様?あの…起きてます?」
すると彼はいきなり半身を起こして私を掴んでそのまま押し倒してしまいました!
いいい、いやああああ!そんなイケメンな顔で見ないでええー!
と悶えているとケヴィン様が近づいて
「エル…やっぱり可愛いね…」
チュッ…と額にキスされたり瞼にキスされたり!!
ええっ!?ちょっと!?どどどういうこと!?
頰にキスされ…とうとう唇にキスされそうになり私はガッとケヴィン様の顔を掴み止めました。
すると死んだ目が…閉じて…バタン!!
と私の上にぶっ倒れてしまいました!!
そしてすこやかな寝息!!
はあああ!?
まさかの寝ぼけでした!!
私は渾身の力でケヴィン様をゴロンとどかしてもまだ寝ています。とりあえずソッと抜け出しまして自分の身支度を整えて起きるのを待ちました。
ちなみにクッションは全部ベッドの下に落ちていましたよ。
ようやくモソっと布団が動き、ボーッと死んだ目をゴシゴシしています。
「おはようございますケヴィン様…そして引っ叩いていいですか?」
と私は起き抜けにそう言うとケヴィン様はようやく覚醒し
「は?何でいきなり引っ叩くのよ?」
と申されたので先程のことを言うと流石にケヴィン様は赤くなった。
「ああ…そ、そう言えばそそそんな夢を見たような見てないような…あはは」
と苦笑いした。
「全く本当に朝が苦手なのですね」
「ごめん…」
と素直に謝りケヴィン様も身支度を整えた。
遅い朝食に食堂に行こうとすると待ったと止められた!
「どうしたんですか?」
「いや、ちょっと…ベッドを汚しとかないとね、この後使用人に何も無かったと悟られバレるわ」
「ハッ!!」
と私も気付いた。
そこでどうするか?と思い、とりあえずちろっとだけ水をベッドに垂らしたりして偽装するが
「なんかお漏らしみたい。ダメだわこれ」
と死んだ目になった。
「仕方ないわね…これで行くか!」
「何をする気ですか?」
ま、まさかご自分のを…と想像して赤くなる。
死んだ目でケヴィン様が私を見てシーツを掴みニヤリと笑い、
ズビビビーッ!!
とシーツで鼻を噛んだ。
「ええええええ!?」
汚い!!いえ、イケメンの鼻水ですからどうなんでしょうか!?いや汚い!!
「当分これでいいわよ。エルもしかしてやらしいこと思ったわね?」
「思ってませんよ!!まさか鼻水とは思いませんでしたけど!!」
「じゃあ!ご飯食べましょうね!!!ご飯!!」
とケヴィン様はニコリと笑い部屋を出て朝食を取る。
ここにいる間はどうにかこれで誤魔化すらしい。鼻水出す為に調理場から胡椒まで持ち出す始末である。
それから朝は寝ぼけることがあれば遠慮なく引っ叩いてと言われたので遠慮なく何回か引っ叩いてやったりもしました。
「エル…容赦ないわね…」
「はい、イケメンの頰叩くのに抵抗はありますけどね」
という会話を交わすが、私達を遠目で見る使用人達の視線はもはやうっとりと温かく見守られております。中年の侍女からは
「エルメントルート様…お身体は辛くないですか?あんな毎晩…若いですねぇ…ほほほ」
と言われる始末だ。
紅茶を飲みながら本のページをめくるケヴィン様は申し訳なさそうにしている。
「だって、仕方ないわよ…。そういうことしてるように見せなきゃなんないし…。鼻水枯れたらどうしようかしら…鼻噛みすぎて痛くなったらどうしようかしら」
と死んだ目になる。
私にはどうにもならないので、流石に私も申し訳ないので
「うーん、分かりました。これからは寝ぼけて私の胸触ってても引っ叩きませんよ。なんか可哀想ですし」
というと照れながらも
「大体寝ぼけてる時って何も覚えてないからね!!ほんと!!」
「まぁそうですわよね、寝ぼけてる時ってケヴィン様男口調になりますもの」
「ええっ!?」
と自分で驚いてケヴィン様は焦った。
「そ、そう…なんだ…ふうううん…」
と様子が変で赤くなった。
そしてため息。
「どうしたのですか??」
「うっ…なんでもないわよ!…外散歩しない?」
と促されお庭を散歩する。
しかしその顔は少し考え込んでいるようだった。
一体どうしたのかしら?
「ねぇエル…今日は私ソファーで寝ていいかしら?ねっ!?」
と真剣に言われ滞在も残り少ないし了承した。
なんかホッとしたように見えました。
別荘の庭で緩やかな午後を過ごしている私達。
「エル…明後日近くの村で星祭りあるんだって」
「まぁお祭りですか!行きたいです!」
「そうだね…残り少ないし…」
すると控えていたノイベルトさんがアップルパイを切り分けながら
「うおっほん…ケヴィン様、エルメントルート様知っておりますか?星祭の夜にキスをすると永遠に離れることなく結ばれる伝統がありまして、夫婦や恋人はこぞって参加するのですよ?」
「へー」
と死んだ目になるケヴィン様。
「ああっ、これは失礼を!お二人はもうお熱く結ばれていると言うのに!」
「キャンキャン!」
とレックスも嬉しそうに吠えた。
「………………そうだね…毎晩エルに無理させて済まないしね」
と死んだ目で演技するケヴィン様。
き、気の毒になってきましたわ。何せ毎朝あの偽装工作をしていらっしゃるし!!
一回私も自分の鼻水着けましょうか?って言ったら
「いいわよ…女の子が鼻赤くしたらダメよ…」
と気遣われたし。
「じゃあ、今日は睡眠をしっかり取った方がいいから寝室は別にしようかな…一緒に寝ると手を出してしまうから…」
「おお!判りました!ケヴィン様!紳士ですな!!」
ケヴィン様は死んだ目で薄ら笑った。
久しぶりに偽装工作しなくてよくてホッとしてるのかしら。
しかしやはり私を見ると照れて俯く。
困りましたわ。
お部屋に帰る途中2人になった時私は
「ケヴィン様!明日はお友達として楽しみましょう!ねっ!?」
と明るい声で言うと
「ええ!そうね!ありがとうエル!!」
とニコリと微笑み自室に入るケヴィン様。
その彼が酷く苦しんでいることは私はまだ知らなかったのです。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます