第3話 婚約者はイケメンですが中身は女の子ですから

 それから私とケヴィン様はよく会うようになり、お父様とゴット様は多いに勘違いなさりニコニコと応援している。


 お茶会にカモフラージュのお花を持ってくるイケメンは遠目に見てもイケメンでしかない。


「やっほー、エル!元気?この花どう?いい匂いよ?綺麗だし。でもまぁ花の命は短いわよねぇ…」

 としみじみ言う。口開けばイケメンでもオネェ様になるのか。中身女の子だしね。


「ほんとは私だってね、クッキーとかお菓子とか作りたいのよ!でも我慢してるのよ!だって私みたいなイケメンが料理してるとおかしいでしょ!?」


「それはそれで割り切ったら案外いけるんじゃなくて?」


「いや、怒られる。一回だけ子供の頃にやったことあるの…そうしたらお父様にゲンコツ食らったわ。男がキッチンに入るなっ!!って凄い怖くてそれ以来入ってないわよ!あのクソ親父!!」

 とケヴィン様が死んだ目で行った。

 何回も言うがこの婚約者様は大変イケメンだが目が死んでいる!!全ての光を失ったような漆黒の瞳…。呪われてんじゃないかとさえ思う。


「ケヴィン様…相当な苦労というか諦めをされてこられました?」

 と聞くとケヴィン様は死んだ目で


「あんた…あんたがもし前世女で男に性転換で産まれたとしたらどう思う?」


「えっ!?」

 と急にふられた。


「まず確認するわよね。その…ついてなかったものがついてんのよ!最悪だったわよ!!そっから私の人生光失ったわ」

 はやっ!!早いって!!


「男として生きる選択はなかった…。でも半端にこの綺麗な顔に化粧して女になり男を相手に商売するのも嫌でしょ?なんか別にオネェになる気もなかったの!言ってみれば私ってもうあれよ!性別不明の天使的な?何か?」

 自分で言うな。


「だから旅ですか…」


「そう思ってたんだけどねー?子供が飛び出して生きてけるほど甘くないじゃない?大人になったらって思ったけど、結局タイミング逃しちゃって引き籠り続けたわ。本ばっかり読んでた」


「男同士という考えはないんですか?」

 一応聞いてみたら死んだ目をまた向けられた。


「ああ…男同士。BLねぇ…。あれってさぁ、自分がやるのと人がやるのと違くない??それに私引き籠って夜会にも出なかったからそもそも出会わなかったじゃない?うーん…出ていたとしても何か嫌だわ。私はきっと他人のを見る専門だから、自分は嫌だわ」

 と言った。ええ、確かに私がもしケヴィン様の立場ならそう思いそうだわ。


 そこでノック音が聞こえてギクリとして咄嗟にガシっとケヴィン様が私の手を握りしめて甘い言葉の演技を始めた。


「失礼します、紅茶のお代わりとお菓子をお持ち致しまし…」

 とメイドが入ってくる。


「本当にエルは可愛いね…。この豆粒みたいなクリッとした緑の目に栗色のフワフワの雲みたいに柔らかい髪に…。細い指。ああ、愛しいよ!早く結婚したいね」

 とイケメンが演技力バツグンで言ってくるから流石に照れる。


 メイドは素早くお菓子を置いて去った。

 途端に手を離し机に頬杖ついてだらけたケヴィン様。


「はあ…。演技だる」

 と死んだ目で脱力しきっている。これが私の婚約者様だ!!


「んで最初に戻るけど…私今じゃ慣れたけど流石に生理現象だから仕方ないにしてもトイレがほんと嫌でさ…我慢し過ぎてお腹壊すのよ。夜会とか行かないのも半分そのせいね。エルには悪いけどトイレ行きたくなかったのもある」


「んえええ?そんなことで!?流石に夫婦になると出席はまぬがれないですよ?これからもですが!」


「だって…ほんと人嫌いって言うか人の多いところ苦手なのよ!エル…過敏性腸症候群って判る?人がたくさんいる所にいると緊張でトイレ何回も行きたくなるやつ!!私それなの!」


「ええええええー!!!」

 そうか半分は病気というのもまるきり嘘じゃないのか…。


「ね?夜会なんてやってらんないつの」

 とまた死んだ目になる。


「ていうか夜会って何が楽しいの?社交は判るけど…ダンスとかドレスとかいちいち貴族社会がめんどくさいのよっ!庶民に転生したかったわ!せめて!」

 庶民に転生したいとか凄いわね…。


「まぁそれで私にドレスの一つも贈ってくださらなかったのですね?」


「だって…あの頃はエルに諦めて貰おうと思ってなんっもしなかったわ…ごめんね?これからは一応可愛いの選んで贈るわよ」


「ちゃんと夜会も出て欲しいですけど…私いっつも壁の花です。友達が羨ましいくらい」


「…………ごめんなさい…ううん…出るしかないか」

 と死んだ目をした。


「あ、他の女のゴマスリ気持ち悪いからエルとしか踊らない」

 とドキッとすること言われるけど女避けセンサーみたいな役割てすわね私は。


「はああ、私もドレス着たいけど着たら変態だしね…神さま馬鹿野郎!!」

 と死んだ目をして嘆いたケヴィン様は後日ドレス贈ると約束して後日めちゃくちゃ可愛いドレス贈ってきた!流石元女の子である!心得ていらっしゃる!!


 一応着てみたけどサイズもピッタリだし色も全部合ってる!


 でも心は女の子だからあの方は…。私とは一生恋愛関係にはならないから私は他の人の子供を産むしかないのかしら。…となると身分の低い男性を探さなければいけないわ。


 あの方以上の人見つかるかしら?

 そもそもなんか何年も私も恋とかしてないしどうなのかしら?一応あの方と普通に結婚して愛がなくとも子供産む道具としての役割果たそうとしてましたしね。


「はぁ、複雑だわ。私もモテる方じゃないし、そもそもモテていたら夜会でとっくに声掛けられてるし!!」

 しかし無情にも夜会の日は近づく。ケヴィン様も初めて行く夜会だ。お腹大丈夫かしら?あの方は。とりあえずお腹のお薬用意しておこうと私は思ったのです。

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