第三話 部活動とアルバイト


「すみませんご主人様っ! もう業務終了ならこれからバイトがあるので失礼していいですか?」



 個室を訪問してどんどん従者を追い出している最中、領主会議からずっとついてきていたサクラが申し訳なさそうに言ってきた。

 サクラはバイトと言っているが、実はこれも部活動の一環で、官営商店や朝と昼に行っている弁当販売所などの実店舗で販売業務や給仕、製造補助などを行うと、時間給が出るようになっているのだ。

 官営店舗以外の城や学園でも書類整理などの雑務があり、小遣い程度ではあるが、希望者には働ける場所を用意してある。


 学園に隣接した魔導公園にある軽食販売所や朝と昼に行われている弁当販売所、最近新設したカフェテリアなど学園周辺にはバイト先が多いし、飲食店の給仕なんかは女子に人気だ。貧困家庭の生徒や寮生が仕送りするために働いている例もある。

 本業はあくまでも勉強なので、働ける時間帯は制限しているが。



「さっきも言ったけど、今日の会議は終わってるから自由にして良いんだぞ」


「ありがとうございますっ! 早速行ってきますねっ!」



 大きく頭を下げると、「ではでは!」と言いながらサクラはバイト先であるカフェテリアへ向かう。

 末席と言えどファルケンブルクでは大臣クラスの役職に就いているサクラには結構な額の給料を払っているんだけど、何故わざわざバイトしてるんだろうか?

 まあそこそこ裕福な貴族の生徒でも、自分で労働して金を稼ぐことは大事とバイトをしている例もあるらしいのでそのあたりは詮索しないけどな。

 そんな貴族ばかりなら今回こんな問題は起こらなかったんだが。


 俺はそうぶつぶつ言いながら次の個室に向かう



「そういやお前らも帰って良いんだぞ」


「炊き込みご飯を食べたら帰ります」


「……じゃあもう調理室へ向かっていいぞ。クレアにはもうすでに何人か見学に向かうから、何かしら食べさせてやってくれと伝えてあるから」


「おお、では失礼しますじゃ!」


「俺もこれが終わったら顔を出すと言っていたと伝えてくれ」


「わかりましたじゃ!」



 三人目のその言葉と同時に。アイリーンと婆さんを除く幹部連中がざざっと整列し俺に一礼をすると、ぞろぞろと寮を出ていく。全員調理室へと向かうのかね。

 正直邪魔だったからいなくなってくれてありがたいんけど、なんとなく腑に落ちない。



「じゃあさっさと残りの個室から従者を追い出すか」


「はっ」



 まず俺がノックをして出てきた従者と婆さんが話す。それでも納得いかないようならアイリーンに校則に違反していることなどを伝えさせる。

 それでも抵抗するなら俺が話をして、抵抗するようならメイドさんに連行してもらう。


 そんな手順で次々と従者を学園内から退去させていき、小一時間ほどで全個室から従者の退去が終わった。



「九人もいたんだな」


「以前はもう少しいましたね。というか個室を希望したほとんどの貴族が入学時に連れてきた従者をそのまま個室に入れていましたから」



 婆さんが少し困ったようにそう言う。



「たしかに貴族って格式とかそういうのを大事にするからな。そのあたりを考えなかった俺のミスだ」


「いえ閣下、申し訳ございません。私たち官僚がもっと早くにご相談すべきでした」


「もともと義務教育だのなんだの言い出したのは俺だからな。アイリーンは気にするな。それよりも来年度から生徒が増えるからどんどんそういう問題は潰していかないと」


「はっ。ありがとうございます」



 婆さんとアイリーンを連れてクレアのいる調理室へ向かう道すがら、今後問題になるであろう件について話をしていく。



「そういやバイト希望者も増えそうだな」


「ですね。両親に仕送りをしたいという生徒よりも、自分でお金を稼いでみたいと思う生徒が多いことに驚きでした」


「自分で金を稼ぐってのは大事なことだけどな。そのまま飲食店に就職したいとか、店を出したいって生徒も出てくるだろうし」


「そうすると、現在の飲食店や販売店、学園や城での書類整理など以外にもバイト先を増やす必要が出てきますね」


「全員がバイトされても困るんだけどな」


「とはいえバイト先の選択肢を増やしておく必要はあるかと」


「だな。そのあたりは各担当官からアイデアを出させるか」


「はっ」


「例えば農業に興味のある生徒が、田植えや収穫の手伝いのバイトを通じてより農業への理解を増し、専門課程でも農業関連を選択するみたいなことになれば良いんだけどな」


「そうですね、向き不向きもありますし」


「まあその農業を担当している担当官は、今はカフェテリアでバイトをしてるんだが。そういやあいつ生徒でも無いんだよな」


「サクラ殿は学園生ではありませんが、ご自身の作られた作物がどのように消費されてるか知りたいとのことでしたので、特例でバイトを許可しています」


「ああ、そういう理由だったのか」


「あとはクレア様と一緒にカフェテリアで提供するメニュー開発なども手伝っていただいていますね。亜人国家連合の食文化はここファルケンブルクでも人気ですし」


「クレアも色々やってるんだな」


「クレア様はとても有能な方ですから」



 クレアは家事も全部やってるしな。たまに爺さんたちの魔導具開発の手伝いもしてるし。

 でもクレアもこうやって学園に関わらせることが出来て良かった。クレア自身が望まなかったということもあるが、学園に通う年齢なのに俺たちの仕事の手伝いをさせてしまっていたからな。


 今後増やしていく予定の学園のイベントなんかにも積極的にかかわらせてやりたいな。



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