第二十七話 ケンカの原因
ヤマトとムサシが再生して、ほんの少しだけ成長した姿になった翌日。
「パパ! はやくはやく!」
「ぱぱおそーい!」
「お兄ちゃんこっちは準備できたよ!」
「はいはい」
朝食が終わり、他のメンバーが登校したあと、俺とエリナ、クレア、ミコトとエマのいつものメンバーで魔導公園に散歩に向かう。
ついでにヤマトとムサシも一緒だ。
「「ピッピ! ピッピ!」」
「朝からうるさいなお前ら」
「「ピー! ピー!」」
ミコトとエマの頭の上に乗っているヤマトとムサシが、俺に向かって抗議をするように騒ぎだす。本当にうるさいなこいつら。
再生して成長して以降、やたらとエサを欲しがるし。
体は一回りほどしか大きくなってない割には食べる量が倍近くになってるんだが。
このペースで増えていったら捨てるしかなくなるかもしれん。
やはり人間と共存できなくなった理由ってこれなんじゃないか?
「兄さま、お昼はまた魔導公園の売店ですか?」
「そうだけど……。節約も良いけどどんどん消費活動をしないと経済が回らないんだぞ」
「それはわかりますが……」
財布の紐が固いクレアが、魔導公園の散歩のために弁当を用意すると言ったのを俺が止めたのだ。
前回の散歩で食べたおにぎりセットは美味かったしな。
それに、先程クレアにも言ったが経済を回すことは大事だし、領内で金を回せば結局は自分達に帰ってくるのだ。
かしこいクレアはもちろん理解しているのだが、長いこと金に苦労した経験からか未だにその頃の感覚が抜けないようだ。
「クレアも納得したようだし行くかー」
「「「はーい!」」」
「「ピー!」」
……やっぱヤマトとムサシって人間の言葉を理解してるんじゃないのか?
いや、言葉を理解しているというよりは、なんとなく人間の言っている言葉の雰囲気を察してる感じだろうか。
ヤマトとムサシが俺に向かってピーピーうるさいときって悪口を言ったり考えてたりするときだけだしな。
「いこヤマト!」
「ピッ!」
「いくよむさし!」
「ピピッ!」
頭の上にピッピピッピと歌うようにご機嫌に鳴いているヤマトとムサシを乗せたミコトとエマが魔導公園に向かってぽてぽてと歩いていく。
俺は絵面的に間抜けな娘ふたりを少し心配に思いながらあとを追って歩いていると、すぐに魔導公園に到着する。
「また魔導観覧車に乗るか?」
「んーとね、おさんぽしたい!」
「えまも!」
「「ピッピ!」」
「んじゃ公園の周囲をゆっくり歩いてまわるか」
「うん! ヤマト、すきにとんでいいよ! あまりはなれないでね!」
「むさしもいいよ!」
「「ピッピッピ!」」
ミコトとエマから自由行動? の許可が出たヤマトとムサシがバササっと飛び立ち、俺たちの真上をくるくると飛び回る。
「これがフェニックスねー」
「パパ、フェニックスって強いの?」
「弱いらしいぞ。だからこそ絶滅したと思われてたらしいし」
「じゃあわたしがヤマトとムサシをまもるよ!」
「えまもまもる!」
「「ピーピー!」」
娘ふたりが弱小フェニックスを守るという宣言をすると、ヤマトとムサシが俺の両肩に降りてきて、抗議するように俺に向かって鳴いてくる。
弱くない! とか、逆にミコトとエマは自分が守るとかそういうことを言いたいのかな?
「ミコトとエマは相当強いぞ。絶滅しかけたお前らじゃ相手にならないんだからおとなしく守られておけ」
「「ピッピ! ヘタレ!」」
「は?」
「「しゃべった!」」
「お兄ちゃん、ヤマトとムサシって喋るんだね!」
「インコなど喋る種類の小鳥が存在するのは知っていましたが、兄さまフェニックスも喋るんですね」
「いやいやお前ら、それ以前に突っ込むところがあるだろ。なんでこの駄鳥は俺をヘタレ呼ばわりしてるの?」
「だちょうじゃないよ、フェニックスだよパパ!」
「そうだよぱぱ!」
「「ピー! ヘタレ!」」
……いやマジでなんなの。誰かがヘタレって単語を教え込んだのか?
ミコトやエマがヘタレなんて単語を教えるはずがないし、もし覚えさせるとしてもまずは自分の名前を呼ばせたくなるだろうしな。
まずは一番フェニックスについて知ってそうな爺さんに事情聴取だ。昨日聞きそびれた件もあるしな。
「メイドさーん、爺さん呼んできて。この駄鳥について聞きたいことがあるって言ってたって伝えて。至急で」
「はっ」
俺がメイドさんを呼ぶと、いつものようにミニスカメイドさんがどこからか現れ、爺さんへの使いを頼むと一瞬で姿を消す。
「パパ! あのおねえさんのふくかわいいね!」
「えまもきたい!」
「「駄目!」」
「「えー」」
幼女にミニスカメイドのコスプレなんかさせられるか。
それにしても、ベアトリーチェというエルフの女が言っていた、飼い主とケンカしてるフェニックスを見たことがあるという件を思い出す。
そのケンカの原因ってこれじゃないのか?
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