第十四話 成長?
ヤマトとムサシが孵化してから二週間ほどが経過した。
二羽はもう完全にミコトとエマの肩乗り鳥と化し、「ピッピピッピ」とご機嫌に鳴いている。
必然的に巣箱から出される時間が増えることになったヤマトとムサシは、部屋の中でフンを落としまくっているのが最近の悩みの種だ。
ミコトとエマのトイレの躾の効果はまだ出ていない。
まあ肩に乗っている状態だと部屋の隅に置かれた巣箱は遠いからまだ飛んで帰れないからじゃないかと思っているんだが。
そして二羽がフンを落とすたびに、ミコトとエマは二羽を巣箱に戻してフンの掃除をするのだが……。
「なあミコトエマ、なんでそんな恰好で雑巾がけしてるんだ?」
雑巾がけをするふたりのその恰好はまるで、旧スポーツテストで実施されていたという立位体前屈そのままだった。
「なんとなく?」
「なんでだろ?」
「腰に良くないからやめなさい。クレアの雑巾がけは見たこと無いのか?」
「しってるけど、フンのところをそうじするだけだしね!」
「うんうん!」
「とにかくその恰好はやめなさい。もう日本のスポーツテストでもやってないんだから」
「「よくわかんないけどわかった!」」
俺に言われたミコトとエマは、素直にクレアがいつもやっている雑巾がけのスタイルに戻す。
旧スポーツテストとか良くわからないけど、文科省がやめるくらいだからやはり弊害があるのだろう。
ふたりが雑巾がけをしているあいだ、巣箱に戻されたヤマトとムサシの様子を見に行くと大人しくミコトとエマが迎えに来るのを待っているようだ。
もう巣箱から飛び出せるくらいには飛べるから夜は布を被せちゃうんだけど、今は飛び出すことなく大人しくしている。
「しかしもう二週間は経つのに全然大きくならないのな。毎日のどをパンパンにするまで食う癖に」
「「ピーピー」
「でも羽毛はだいぶ生えそろってきてる気はするな。見た目は汚いままだけど」
「「ピー! ピー!」」
俺の言葉がわかるのか、大人しくミコトとエマを待っていたヤマトとムサシが、俺の方までよちよち歩いてきて、巣箱にゴスゴスと体当たりをする。
ゴスゴス体当たりするたびにアホ毛が揺れてちょっとかわいい。
これで保護色じゃなくてヒヨコみたいな綺麗な黄色だったらもっと可愛かったんだけどな。
まあ自然の中であんな目立つ色をしてたらあっという間に捕食されちゃうだろうし仕方がないんだろうけど。
「……やっぱり言葉を理解できるんかなこいつら」
「「ピー! ピー!」」
なんかうるさいなこいつら……。
「兄ちゃん!」
ヤマトとムサシに抗議されていると、仕事中のはずの一号がリビングに入ってきた。
「一号お前はまだ仕事中じゃないのか?」
「師匠に許可貰って来た。それより兄ちゃん、一緒に来てくれ」
「なんなんだ一体」
「タンドール窯を作ったから兄ちゃんのマジックボックスで運んで欲しいんだよ」
「仕事中に何してるんだよ……」
「師匠がな、『今日は気分が乗らないから帰っていいぞ』とかたまに言うんだよ。んで帰ってもアレなんで、みんな鍛冶場で色々作ってるんだ」
「親父は一応、公務員なんだが……勝手に休日にしたら駄目だろ」
「まあそんなこんなでタンドール窯が出来たから運んでくれよ兄ちゃん」
「わかった。エリナとクレアに行ってくるからちょっと待ってろ」
「おう!」
エリナとクレアにミコトとエマを任せ、一号と一緒に魔導キャンピングカーで鍛冶場に向かい、タンドール窯を回収する。
チキン料理はまだちょっとタイミングが悪そうだからしばらくはナン専用窯だなこれ。
◇
ヤマトとムサシが孵化してから四週間ほど経過したある日の昼食後。
いつものようにリビングで各部署から提出された書類に決裁印を押す作業をこなしていると、ミコトとエマの肩に乗っているヤマトとムサシがいつも以上にばっさばっさとまだ小さい翼を羽ばたかせて暴れていた。
「ヤマトどうしたの? おりたいの?」
「むさしすばこにかえりたいの?」
「「ピッピ! ピッピ!」」
ミコトとエマが肩から降ろしてやろうと手を伸ばすと、その手を避けるようにヤマトとムサシが宙を舞い、ふたりの頭に着地する。
「わー! すごいね、とべたね!」
「すごいすごい!」
「「ピッピ!」」
ミコトとエマの頭の上から、その様子を見ていた俺に向かって誇らしげにドヤ顔で鳴き声を上げるヤマトとムサシ。
なんかむかつくなこいつら……。
しかし明らかに鶏とは違って飛べる種類みたいだし、そろそろケージとか止まり木の用意をしないとな。
それにしても孵化してから一ヶ月弱も経過するのに、ヤマトとムサシの体がほとんど大きくなってないんだよな。
羽毛は生えそろってきてるから、ボリューム感が増してるんだけど。
ずっとこのままのサイズなのかな? 三人目に聞いても良くわからないが魔鳥だし大丈夫じゃね? で終わるしな。
亜人国家連合か、エルフ王国で魔鳥に詳しい人間がいないか聞いてみるかな。
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