第二十話 魔導駆動二輪車


「センセ! セグAで一度飛んでみますね!」



 マリアがそう宣言してセグAに乗り、目をつぶって集中する。

 周囲から魔素を集めてるのかな? そう思った瞬間にセグAの足場の下半分が淡く光だして宙に浮き始める。



「マリア、凄いけど待った待った! すごく興味があるけどもう暗いし、明日にしよう。魔導ハイAも明るい場所で動いてる状態で見せてやるから」


「わかりました!」



 とりあえずもう外も暗いので、魔導ハイAとセグAに関しては明日に広い場所でお披露目ということになった。

 セグAを地面に着地させて飛び降りると、パタパタとセグAを折り畳み、一枚の板状にした。



「携帯性も考えてるのか」


「燃費が悪いので常に乗れるアイテムじゃないですしね。ここぞというときに役立つように常に携帯しなければ意味がないですし」


「そのサイズ程度なら安くマジックボックスが手に入るかもしれないな」


「それも先史時代の失われた技術ロストテクノロジーですね。安いと言ってもそれはセンセの感覚で私にとっては高額でしょうし、そもそも無一文の私には手が届きません」


「最低でも金貨百枚ってのが相場だが、稀に数キロしか収納できないマジックボックスが格安で出回るらしいんだ。何ヶ月か給料貯めるか、ボーナスで買える額で手に入るかもしれんぞ」


「まあ気長に待っときますわ!」



 マリアは家の中にある魔導調理具などにも興味津々だったが、マリアの部屋は用意してあるし、仮採用中はここで暮らすんだからいつでも見られるだろと説得したあと、にこにこ顔のミリィに風呂へ拉致されていく。

 ミリィの中身はおっさんじゃないのか? 大丈夫か? 凄く不安になってきた。





 朝の弁当販売中に闇金業者がひとりお縄になったあと、リビングで朝食を摂る。

 というかマリアはどんだけ闇金業者からつまんでるんだ。まるで闇金ホイホイだな。

 もうファルケンブルク領の治安が良くなって良かったと思うことにしよう。



「トーマ! 邪魔するぞい!」


「またか爺さん。朝食を食っていくのは構わんが、せめて弁当販売を手伝える時間帯に来い。どうせ朝早く起きてるんだろ」


「老人扱いするな!」


「うるせー、百歳超えた爺さんの言うセリフじゃねー」


「そんなことよりトーマよ、魔素で駆動する空中浮遊機の実演を行うと聞いたから来たんじゃ。ついでに試作の魔導具も持ってきたぞい」


「やな予感しかしないけど、もともと呼ぶつもりだったから丁度良かったよ」


「ロイドさん、お食事をお持ちしました」



 爺さんを防御結界の中にいれた張本人のクレアが爺さんの分の朝食を持って来る。



「おお、すまんのクレアの嬢ちゃん」


「んで、爺さんの試作の魔導具ってなんだ?」


「魔導駆動二輪車じゃ」


「なんでまた乗り物なんだよ……」


「魔導エンジンの高燃費化と高出力化を研究しとるんじゃがな、現状の魔導エンジンでも高速移動できる乗り物を考えとったら魔導駆動二輪車になったんじゃよ」


「まあエンジンの出力をそのままで速くしようとしたら車体を軽くするしかないから道理だな。タイヤも減るし」


「軍の偵察車両にどうかと思っての」


「バイクで偵察部隊を編成するってのは聞いたことはあるから有効だとは思うがな」


「あとでクリスの嬢ちゃんとアイリーンの嬢ちゃんにも聞いておくわい。その前にトーマに見せておこうかと思っての」


「マリアのセグAを見るついでだし構わんが、俺の評価なんて関係ないだろ?」


「トーマが気に入っとった! っていうだけで採用されると思うんじゃが」


「流石にコストとか有効性を見ると思うぞ。まあ爺さん早く飯を食え、食い終わったら魔導ハイAで町の外の少し広いところに行くから」


「わかったぞい」



 ガツガツと食べだす爺さんを見ながら、とっくに食い終わってた俺はお茶をすする。

 ガキんちょどもや一号はすでに学校や職場に向かったようだ。



「パパ! 今日お外行くの?」


「いくの?」



 ミコトとエマが凄い笑顔で聞いてくる。

 セグAのお披露目とマリアに魔導駆動車を見せる予定で昼前に帰ってくる予定だったが、それに加えて魔導駆動二輪車も一緒に見ることになったからな。

 もう弁当でも持って昼飯も現地で食っちゃうか。



「そうだな、今日は外で昼飯を食おうな」


「「わー!」」


「クレア、すまないが弁当の準備を頼む」


「もう準備できてますよ兄さま」


「流石だなクレア」


「てへへ」


「というわけでクリス、今日もし授業が無ければこっちを優先してほしいんだが」


「ええ、今日は授業の予定もありませんでしたし問題ありませんわ旦那様」


「お兄様! わたくしも行きます!」



 ほっぺたにご飯粒をつけながら立ち上がって俺にアピールしてくるシルヴィアの将来が少し心配だ。一応騎士団長で軍部担当で体育担当教師なんだが。



「シルは今日の授業は無いのか?」


「……あります」


「じゃあ駄目だ」


「そんなーと言いたいところですが仕方がありませんね。姉上、お兄様をよろしくお願いいたしますね」


「かしこまりましたわシルヴィア」



 意外とすんなり引き下がったな。

 生徒もかなりシルに懐いてるって聞いてるし、職員からも良い教師って評判だからな。

 流石に授業をやらないってことはシルにはできないんだろう。



「シルねー! おみやげかってくるからね!」


「ありがとうございますミコトちゃん」



 シルはミコトを抱きしめると優しく頭をなでる。



「えまもかってくるね!」


「エマちゃんもありがとうございます」



 シルはエマも一緒にハグする。子どもに凄く懐かれるんだよなシルは。

 帰りに何か買って来てやるか。



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