第46話 エムってば、そんな難しい話をしても
エムってば、そんな難しい話をしても、理解してもらえないって。
ほら、案の定キャロラインが机を両手て叩いて興奮している。
「そんなバカな……、私たちは1万年の歴史があり、千年ごとに魔族と戦ってきたんです」
「キャロライン王女、それは空間量子が複雑に絡み合ってこの世界に住む人に幻想を見せているのにすぎないの、です。過去、現在、未来は同時に存在するの、です。それが京介のいた世界の量子論の常識なの、です!!」
「正直、エムさんの言ってることはよくわからへんけど……。うちの光属性魔法は時間を進める魔法だと京介さんに教えられて……、それに私が戦った魔族の闇属性の魔法は時間を巻き戻す魔法だって言われて……、うち、合点がいったんや。確かにこんなことは過去、現在、未来が同時に存在しないと説明がつかへんと思います」
「そんな、充希~」
「後、確信は持てないんだけど……、魔族を見た君たちこの世界の人たちの反応を見ると、それ以外にも両極端な何かがあると思えるんだ。いや、俺が住んでいた世界と少し違う感じがして……」
「さすが京介、そのことに気が付いていましたか、です。私も違和感をずーっと感じていました、です。それが何なのかはっきり知るために、私たちも魔王との戦いに参加することを進言するのです」
「エム、それはマジか?!」
「マジなの、です。この世界で神(集合的無意識)が何をしたいのか知りたくないのですか?」
「いや、まあ、それは知りたいんだけど……」
「じゃー、決まりです」
結局はエムに押し切られてしまったようだ。
「おおきに、うち、希望が湧いてきたわ」
「京介さんが持っているヒュドラの魔石、王室で100億ポリーで買い取らせていただきます。本当は交渉の切り札にしようと思っていたんですけど……」
「えっ、ほんとに?助かる。でも、こんな魔石、政治に関係あるのか?」
「京介さんは知らないんですか? その魔石1つでこの王都のエネルギーやインフラを一年間維持できるんですよ」
それは知らなかった。魔石って云うのは魔力の塊だからな。この世界は電気、ガス、水道なんかのエネルギーやインフラを魔力で賄っているんだった。
「お買い上げありがとうございます」
「お兄さん、景気よさそうでんな」
「まあ、ぼちぼちですわ」
金額を聞いて、思わずテンションの上がった俺はキャロラインに頭をさげると、すぐさま無意識に充希がツッコミを入れてくる。ここはボケてあげるのが関西人に対するマナーだろ。
俺たちが協力すると云ったことで、キャロラインと充希はやっと席を立ったのだった。
きっと口説き落とすまで帰らないつもりだったのだろう。出口まで見送るついでに充希に声を掛けておく。
「魔王との決戦までにレベルを100に上げとけよ。俺に追いついてくれないと話にならないぞ」
「えーっ、自分、レベル100なん?!」
この一言は、充希の心に火を点けたようだった。
それから一か月、充希はビザール・カブ・ダンジョンに潜り、中層以上を踏破した。アンデット系モンスターから、オーガ、サイクロプスなどを狩り、しっかりレベルを100に上げていた。レベル90越えの充希からしたら雑魚モンスターに違いないのだが、そこは促成スキルでレベルを上げたらしい。
残念ながら、メタルスノーマンとヒュドラは俺が倒して間がないので、対決することはできなったようだ。
一方俺の方はと云うと、王都で酒池肉林、はエムの前でやる訳にはいかず……。くそ、エッチ雑誌に載っている広告みたいに、このグッズ(異世界転移)を手に入れてから、宝くじに当たるわ、可愛い女の子とヤリたい放題、とかを実践するチャンスだったのに……。
しかし、数十年ぶりに羽を伸ばし、エムやサリー、マリーたちと王都を遊び回ったのだった。金と暇と女が居る。それがこんなに刺激的だったとか……。
あの世界じゃ、金なし、暇ない、当然女なしだっからな。
そのついでに郊外で、四天王の一人ヴァルーガを俺は仕留めている。偵察に王都の近くにやって来たヴァルーガと偶然会った(偶然かどうかは分からない。エムが遊びに行きたいと言い張って出かけた場所だったのだ)
そうやって一戦交えたヴァルーガだったが、奴は殺される前おかしなことを言っていた。
「あと一週間もすれば、魔王様が蘇る。そして、勇者とともにこの世界を永遠にお救いになる。なのに、なぜお前のような者がここに居る……。このままでは大いなる神の意思が実現できんではないか!!」と
この世界を魔王と勇者が救う?
大いなる神の意思って集合的無意識の意思の実現ってことだろ……。その大いなる意思って? 集合的無意識が望む先って何なんだ?
俺がいたらそれが実現できないってどういうことなんだ?
短い期間だったけど、俺とエムはキャロラインから以前の魔王と勇者の戦いの後どうなったのか聞き出したし、無理を押して、王宮の図書館にある歴史の本も片っ端から読ませてもらった。
それで結局分かったことは、千年ごとに何度も対決した勇者と魔王はともに消し飛び、グランドクラックの結界が次の千年のために強化されたと云うのだ。
結果的に、人族は魔族に怯えることなく千年を謳歌することができ、勇者は命を賭して魔王を退けたのだから、人族の勝利だと位置づけ、賛辞している。
この歴史にはヴァルーガの話と矛盾がある。ヴァルーガによるとこの世界は救われたわけだから、魔族にとっても有意義なはずで、決して人族の一方的な救済じゃない。それに両方が救われることが集合的無意識の望むことで、俺が一方に力を貸して勝利させることを集合的無意識は望んでいない……。
闇と光、時間逆行と時間跳躍……。相反するものが衝突して行きつく先は……。
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