第22話 仕方ないよ。それは死亡フラグと云うんだ
「仕方ないよ。それは死亡フラグと云うんだ。そして、君たち少女が間一髪で助かるのもこの世界ではお約束なんだ」
俺がそう云うと、エルフの子がキッと俺を睨みつけた。
「なんなの、あんた?! 死亡フラグとかお約束とか……。こうなることがあたしたちの運命だっていうの」
「いや、本当にその男たちにはご愁傷様としか言えないけど……。とにかく、君たちは服を着なよ」
そう言って、アイテムボックスから白衣を取り出して体に掛けてあげた。
いままで興奮して気が付かなかったが、自分立ちがほぼ全裸でいることに気が付いた少女たちは、いそいそと白衣を着だした。
いや、白衣って、裸にワイシャツとかと同じぐらいインパクトがある。卑猥なのに清潔感って男の好きそうなシチュエーションだ。
「あれ? 体中の痛みやしびれがなくなりました」
「ほんとだ。噛まれた傷も消えてる?」
不思議そうに自分の体を見回す少女たち。
「あっ、その包帯や塗り薬には回復魔法の効果があって、さっき飲んだ錠剤はHPとMPを回復する効果があるんだけど……。そっちの方はどうかな?」
「ほんとだ。HPとMPがほとんど回復している」
「なんなんだ? さっき飲んだのはポーションなのか? それもかなり高級な!」
「まあ、そんな感じだ。それより立てるか?」
「うん、もう大丈夫そう」
俺の問いに答えて、二人が立ち上がった。
「あの、ここに居ると、また危ない目に遭いそうですし、出来れはあなたたちと一緒にいてもいいですか?」
「俺たちは、このダンジョンからでようと思っているんだけど、君たちを守れるかどうかも分からない。それでいいのなら」
「そうだな。お前、さっきあたしたちの運命が定められたものって言い方をしたよな。その意味を知るためにもお前たちについていく必要がある」
「サリー……。そんな言い方って」
サリーの食ってかかるような言い方を咎めるようにマリーがいった。
「まあ、気にしないよ。こういうのをテンプレって言うんだ。もし、このシナリオを描いた奴が気に食わないなら、俺たちについてくればいいさ。俺は絶対、シナリオ通りにはいかないからな」
俺の言葉に何かを決心したように頷きあう二人。この二人は理不尽だと思いながら、無気力にシナリオに従うしかなかったのは前の世界の俺とは違う。
さすがに、人の死を何回も見ているこの世界の人たちは強(したた)かでタフだ。
俺の方は、前の世界が気に入らなくて、読んでいた小説の世界が面白いからと、こんな世界を集合的無意識に創造させてしまった一人だ。
責任を感じる必要はないんだけど、実際にこの世界に来てみれば、その残酷さに反吐がでる。(かっこいいだけの世界じゃないか……)。
「あたしはサリー」
「私はマリーといいます。私たちはあなたとパーティを組んでもらっていいですか?」
俺がこの世界について考えているうちに、どうやら、決心がついた二人は名前を告げた。
「そうか、こちらもパーティになることは問題ない。俺は金城京介」
「私はエムっていいます。これからよろしく、です」
「京介にエムか。これからよろしく!」
「サリー、京介さんにエムさんです」
「痛い、痛いって、マリー、耳を引っ張るなよ。分かったって」
「たっく、もう少し女の子らしくなさいよ」
「別に呼び捨てでいいよ。俺たちもそうするし……」
「じゃあ、京介、サリーにマリー、地上を目指して出発です、です」
4人そろって出口に向かって歩き出したけど、サリーとマリーは塞ぎ込みがちだ。ここは何か言って慰めた方がいいのか?
「あの、死んだ男の人って、サリーとマリーの彼氏なの?」
俺の質問に、言葉を選ぶように答え始めたマリー。
「うーん、仲良かったけど、そう云うんじゃない。お互い無いものを補い合っていた関係? ギルドの紹介で一緒にクエストやって、上手くいったからパーティを組むようになった」
「そうだよな。おかけでCランクになれたしな。向こうはその気があったかもだけど、こっちは利用させて貰ってただけだしな。まあ、Cランクハンターがビザール・カブ・ダンジョンの上層で死ぬなんて恥だよ恥」
「何ひどいこと言ってるのよ! あなたって」
サリーの傍若無人な物言いに文句を付けたマリーだったが、サリーが言った後、伏せた目に涙が溜まっていたのを見て、マリーは言葉に詰まっていた。
そんな様子をみて、甘くない世界だと今更ながら胸が痛んだ俺。
「いや、これは予測不可能な事故だろ。仕事を斡旋したギルドとかに文句いって、損害賠償を請求して慰謝料を貰うレベルだろ」
「「損害賠償?」」
俺の発言に首を傾げた二人。そこのツッコミを入れたのはエムだった。
「京介――。ダンジョンはアトラクションじゃありません。それにこの世界では命は吹けば飛ぶような軽さなんです」
「……、ごめん」
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