第16話 薄暗い洞窟の中

 薄暗い洞窟の中、再び魔物たちと行きかうのだが、「スキル ステルス」を展開しているのでこちらに気づかれることはない。偶然こちらに向かってきた魔物を殴り飛ばしてしまい戦闘になるだけだ。

 それより問題はこの中層では、アンデッド系の魔物が多いということだ。

 定番のゾンビやスケルトンは当たりまえで、首無し騎士デュラハンやチュパカブラいやグールって言うのか死肉をむさぼる犬のようなものいる。

 どいつもこいつも不気味で特に目が怖い。気が付かれていないと分かっていても、あの穴だけしかない目に見つめられると思わず緊張が走るのだ。

 うん。こういう不気味なのはだめだ。腐臭も生理的に受け付けない。それはエムも同じようで俺のシャツを掴んで話さない。

「ひっ」

 瞳のない眼窩に睨まれ、ひきつった声を上げたエム。その声を聴きこちらを認識したようで一斉にこちらを向くアンデットたち。また気づかれたか。まあ、俺の無意識的潜在意識から作られたのなら怖がりなのは仕方ない。俺もそういう得体の知れない物は苦手だ。

 レーザーブレードを振り回し、ゾンビやスケルトンを壊していく俺。しかし、しばらくするとバラバラになった骨は組みあがり、ゾンビは上半身と下半身になってもまだ襲ってくる。不死って言うのものなあ……。

 ファイヤーボールの連発でなんとかこの場をやり過ごす。

 

 確かファンタジーでは光属性魔法でないと倒せないのだったけ? 光属性魔法って勇者や聖女の固有魔法じゃなかったっけ。転移するときに女神に貰ったりするんだよな。

 不味いぞ。どこで光属性魔法のスキルって貰えるんだ?!


 再びわらわらと周りを取り囲みだしたアンデットたちに辟易とする。頭の中にいつか見たゾンビ映画で、ゾンビの波に飲み込まれる映像が浮かんだ。こうなれば戦略的撤退か……。

「スキル身体強化マックス」

「スキル重力操作マックス」

 身体強化をマックスにして、飛び上がるとそのまま天井を駆け抜ける。さらに駆け抜けながら、重力を前方に割り振る。レベル90の全力疾走プラス重力加速だ。

 そして、アイテムボックスから取り出したグリセリンの容器。

「スキル、爆裂」

 数滴、アンデットの集団にグリセリンを落とした。地面に触れた途端に大爆発を起こす。俺は天井を加速しながら疾走する。加速装置を起動させ、爆風から逃げるサイボーグ戦士を思い出した。

 すぐ後ろに迫る爆風を感じる。くそう前方の重力5倍、前から5Gで引っ張られる。それに向かう様にさらに地面を蹴る。

 一秒後には秒速5メートル×√90×1.3の10乗+9.8×5で

 5×約9.5×約13.8+49は秒速約700メートル。マッハ2だ。 

 風を舞い、音を置き去りにする。

 

 2秒ぐらい走っただろうか。止まって後ろを振り返ると弱まった爆風と爆発音が通り過ぎていく。視界の先は爆風で砂塵が舞いもうもうとしているが、天井までは崩れていないようだ。まあ、量はかなりケチったからな。

どちらにしろバラバラになってしばらくは動けまい。それに上手くいけば、核を破壊出来ているかもしれない。


 チロロン

「アンデット群の討伐を確認しました」

「レベルが93になりました」

「スキル恐怖耐性を取得しました。グロ耐性は恐怖耐性に統合されました。恐怖耐性のレベルが5になりました」

「スキル毒物耐性のレベルが5になりました」

「スキル異常状態耐性を取得しました。恐怖耐性、毒物耐性は異常状態耐性に統合されました。レベル6になりました」

「スキル俊敏のレベルが5になりました」

「スキル重力制御がレベル7になりました」

「スキル探索を獲得しました。レベル3になりました」

「スキルステルスのレベルが5になりました」


 そうか俊敏を使っていればさらに早く動けたわけだ。状態異常耐性や探索とステルスを獲得したのはアンデット系は闇魔法を得意とするから、その耐性を獲得したわけだ。

 しかし、スキルの重ね掛けでMPを相当消耗した。

 俺はビタミン剤を取り出し、口に放り込む。


「さすがに疲れましたね」

 横からエムの声が聞こえる。さっきエムを意識したからだ。

「エムさん。このダンジョンまだまだ続くんですか?」

「もうすぐでオアシス、です。中層は終わります、です。でもさっきの爆発、中層の魔物のコロニーに相当響きましたし、上層部も揺れたんじゃないですかね? です」

「じゃあ、魔物が逃げ出して、もう会わないと助かるんですが……」

 

 まあ、実際に魔物が逃げ出したみたいで、やっと着いた中層と上層を分けるドーム状になったオアシスには、沼にいるワニのような魔物やロックゴーレムのような生体上あまり環境の変化を求めない物や地震などに強い魔物しかいなかった。

 もちろん、こいつらはすぐさまレーザーブレードの錆にしてしまったんだが……。

 あとはゾンビやスケルトン、それにレイズ。まあ、こいつらは元々死んでいるから逃げ出す必要もないのだろう。さっきと違って、数で押されなきゃ動作は鈍し、スケルトンなんかは核がむき出しで確実に核を破壊すれば脅威でも何でもない。

 スキル状態異常耐性を取得しているから、不気味な見た目にも怯むことはない。

 レーザーブレードでサクサク倒していった。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る