忘れ去ること(仮題)

4seasons

第1話

彼は生きている。名前はなんなのか? 年はいくつなのか? 覚えていない。


だが、日本の言語を話す。確かに日本で育ち生まれきた。交通事故にあったのか。記憶がない。


全くないのだ。


憎しみも哀しみも記憶に左右される。悩みも希望も記憶に左右される。


彼は今 新宿中央公園にいる。ガヤガヤと騒いでいる。もちろん彼のことではない。


服装もどこも汚れていない。顔も手もどこも汚れていない。ただ記憶がないのだ。


記憶は厄介なモノだ。ただ覚えているだけならさほど人の迷惑にならない。が人が集まればそれが異常に左右されるのものだ。


人は誰しもが記憶がある。例えば間違っていても間違いとはいわない。それがトラブルになる。


神がいれば赦しを乞あことができるのに・・・。その神が自分に赦しを乞うてくれれば・・・。


「お兄さん いい仕事があるよ」

「あ はい」


「じゃあ ついて来てくれる。ちょっと時間かかるけど。この辺の相場はわかる。片付け・・」

「知りません」記憶がないとは言わない、ただ『知りません』と言った。


車は中央公園の側道に留めてあった。ピピっと車を鳴らすと4点がつき車が開いた。乗るのは運転する人と自分だけだった。


クルマに乗ってすぐ「タバコは吸う」と聞かれ

「はい」と応えるとすぐさまタバコを出して1本進めてきた。


もらえるモノは断らない。僕のスタンス。


車は右左に大きく揺れて環七と思われるところを右に曲がり進行していった。


路地に入り混む。車をすぐに止める。


ささっと車から降りて案内をしようとする。間違って後ろのビルで待っていた。


そこに注射し、軽く後ろに下がると止まっていた。僕は急いで前の車に走る。降りてきた人の後に続いた。


環七に面した雑居ビルだ。ビルに入る。前の人に続いてエレベーターに乗ると天井が低いことに気づく。


176cmでも差が頭が当たりそうな雰囲気がある。やけに低いなと気付いた。







  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

忘れ去ること(仮題) 4seasons @Archimedes-3Line

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る