SSランクパーティでパシリをさせられていた男。ボス戦で仲間に見捨てられたのでヤケクソで敏捷を9999まで極振りしたら『光』になった……

LA軍@多数書籍化(呪具師100万部!)

第1話「すいません、SSランクだけどパシリなんです!」

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─── 本編です ───


 『SS』ランクパーティ。

 それは冒険者ギルドで認められた最強のパーティの証。


 個々の実力だけでなく、それぞれが発揮する力が合わさりまさに『最強』と呼ばれる一党パーティのことである。


 そして、俺の所属するパーティも、まさにその最強と称されるSSランクパーティだった。



 そのメンバーはと言えば、

 鉄壁の護りを誇る聖騎士ホーリーナイトのアンバス。

 その守りはまさに、鉄壁。たった一人で魔物の軍団を押しとどめたことがあると言われ、『城塞フォートレス』の二つ名を持つ。


 そして、

 人類最高峰の叡智を持つと称される大魔術師ソーサラーのシェイラ。

 その魔法はまさに、至高。たった一人で空を覆いつくしたバグズイナゴ型の魔物の群れを焼き滅ぼしたことがあると言われ、『星落スターダスト』の二つ名を持つ。


 そして、

 清らかな心を持ち全てに慈愛を注ぐ聖女教会のほまれ───枢機卿カーディナルのレジーナ。

 その癒しの力はまさに、神の寵愛。たった一人で小国家群を襲った疫病を鎮めたと言われ、『女神メサイア』の二つ名を持つ。


 そして、最近加入してきた、

 裏ギルドの懐刀と噂される孤高の暗殺者アサシンのリズ。

 素性も不明、性別が辛うじて女であるということ以外は、何もわからないが───Sランクパーティの力添えにと、民間側より派遣された凄腕冒険者。

 その二つ名を『影帝シャドゥエンペラー』という……。



 その中になってひときわ異彩を放つのが俺…………。



 SSランクパーティ「イチ」の雑用係兼荷物運びポーターのグエン。

 その気配りはまさに、母ちゃん。たった一人で食事の準備を整え、掃除・洗濯・裁縫・おつかい・子守に塾の先生ッ! そして、ギルドへの調整と事務仕事の的確さに定評があり、パーティメンバーをして『パシリ』だとか『寄生虫』の二つ名を持つと言わしめるほど。


 そして、忘れてはならないのが、このパーティのリーダー。

 優れた統率をもち、SSランクパーティの要───次代の勇者と称えられる超大剣使いクレイモアのマナック!

 その剣技はまさに、神技。たったひとりで魔王軍の先鋒を全滅させたと言われ、『勇者』の二つ名を持つ……。



 これが、冒険者史上───そして、歴代でも最強と謳われるSSランクパーティ『光の戦士シャイニングガーズ』の編成だった。



 そりゃぁ、人並外れた実力をもつ仲間とはかりにかけられればグエンなんてのは『寄生虫』にしか見えないだろう。

 ギルドでも街でも───そして、パーティでもそんな風に陰口をたたかれている。


 ならば、なんで実力不足なのにパーティにいるのかって?

 決まってる───俺がマナックのパーティの初期メンバーだったからにすぎない。


 もちろんなのだが、マナックだって最初っからSSランクだったわけじゃあない。

 最初はE級から始まり、当時C級だったグエンをリーダーとするパーティから始まったのだ。


 10歳以上年上のグエンは、新進気鋭で才気あふれるマナックの面倒をよく見ていた。

 先輩として、時には鬼や親の気分で───。



 それが冒険の最中。

 仲間たちは、一人、また一人と倒れ───あるいは別のパーティに入るなどして結局メンバーで残ったのは俺とマナックだけ。



 そのうち、年齢のこともあってか能力的には限界に差し掛かっていたらしいグエンは、徐々にマナックに追い抜かれていき。

 ……いつしか立場は逆転していた。


 そして、最初の内はそれなりに遠慮していたマナックだが、優秀なメンバーがマナックの腕を見込んで参入し始めるにつれ、ついにリーダーの立場は入れ替わった。


 ──それからは、地獄だ。 


 あれほど世話をしたってのに、マナックはグエンをまるで奴隷のようにコキ使い始めた。


 「オッサン」「オッサン」と小ばかにするのは日常茶飯事。

 

 「さっさと、あれを買ってこい」くらいはまだしも、

 ときには肉壁。

 ときには囮。


 または、古参の仲間がいるギルドの中でわざと罵倒したりと、まぁやりたい放題。


 挙句の果てにはパシリ扱いにまで発展するしまつ。

 おかげで、ステータスポイントマナックは言いなりに振るしかなくなり、もっていた装備やアイテムも全て取り上げられた。


 だがそうまでしてグエンがこのパーティに拘った理由は、創設者としての矜持と愛着。


 そして、マナックがいつか変わってくれるかも、──と。

 若気の至りとしてほんの少し有頂天になっているだけだ──と、そう思っていたからだ。




 そう、理由はただそれだけだ……。

 それだけさ───。





─── あとがき ───


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