&α Love,(新規)

「手」


「うん?」


「暖かいです」


「薬指はないけどね」


「なぜ、ないのか、訊いても、いい、ですか?」


「生まれたときから無いよ?」


「そう、ですか」


「でもね。うれしいなあ。こうやって君と手が繋げるなんて。薬指がなくてさ、この、ちょっと空いたところに、君の指がくっついてて。しあわせ」


「そうですか」


「へへ」


「店長」


「うん?」


「薬指があったら、というか義指が光ってなかったら、もっと早く出会えてたとは思わないんですか?」


「ううん。薬指がないから君に出会えたようなものだし」


「わたしに?」


「うん。自分でいうのもなんだけど、僕、いろんなことがほとんどできる、才能ある子供だったんだ。でも、料理だけは指が揃ってないと難しくて。それで、料理にはまって、料理人を目指したわけ」


「それで、料理人になったから、私と出会えたと」


「うん。無いものより、与えられたもののほうが、僕には大きい。君は、僕の」


「僕の、なんですか」


「いやあはずかしいなあ」


「言ってくださいよ、もう」


「はずかしいなあ」

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