サイクリング・ウィッチーズ

早桜 文太

現代魔女史序説(設定的なものなので読み飛ばし可)

——世代を重ねるにつれ、魔女の先天的な魔力量は著しい低下を続け、十九世紀に入ると箒にも乗れない魔女ウォーキングウィッチが大勢を占めるようになった。この事態に危機感を募らせた魔女教団は解決策を模索し、一八一三年、教団の技術顧問を務めていたカール・フォン・ドライス男爵(ドイツ)によって人力走行車ドライジーネが開発される。これは現在の自転車の原型であると同時に、人的労力による運動量が魔力量マギカルに変換される特性を持つ魔源鉱石マギカリウムを車軸に組み込むことで、誰しもが安定的に魔力を得られるようになった画期的な発明であった。その後、ドライジーネは改良が加えられ、現在、我々が使用する魔力戦車マギカルチャリオッツへと変遷を辿る。



——一九四五年、人類史上最大の多国間戦争は世界規模の大厄災が起きたことにより劇的な全面休戦に陥った。それまで人間界と魔界とを隔絶していた魔法防壁グリムウォールの崩壊である。魔界より流入する魔獣によって、電気やガスなどの科学インフラは総じて使用不能となり、人類は有史以来の巻き戻しリセッションと呼ばれる文明衰退を余儀なくされることとなった。



——二一世紀の現在、我々魔女教団はその強大強固な組織力を以て、魔獣から生活拠点を防衛し、呪界の探索ならびに資源の収集を行っている。明るい未来を希求する人々に安全を提供し、公平公正な資源分配を行うことで、人類社会の平和と復旧に寄与し続けているのである。

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