第2話 出会い

「聖騎士とは、世界貴族や神殿と同等の権力を~」



 つまらない魔法学の授業。幼い頃から何度も教えられてきた内容。

ここは、魔法科高校関西支部。日本に2つしかない聖騎士や魔術エンジニアを育成するための学校。の、普通科。俺は、如月蒼(きさらぎそう)魔法科高校関西支部普通科に在籍する高校3年生だ。魔法が存在する世界だとはいえ、すべての人間が魔力を持つわけではない。魔力を持つ者はその強さによって瞳に色が出るが、実際そんなのは地球人口の約4割程度だ。選ばれしものにのみ与えられる特別な力。


それが魔力だ。


残念ながら俺は選ばれなかった側の人間だ。普通科にはそんな選ばれなかった人間が在籍する、いわば出来損ないのクラスだ。



 俺だって聖騎士になりたい。だが、聖騎士は選ばれた人間の中でも更に選ばれた天才。どんなに努力しても魔力が無ければ報われることは無かった。



 気が付くと授業は終わっていたらしい。


昼休みのチャイムが鳴ると、俺は真っ先に音楽室へ向かった。音楽室は、HR教室のない4階にあり人が来ることはほとんどない。音楽の先生はいつもカギを開けっぱなしにしているので俺でも入ることが出来るし、防音だからとても静かだ。ここは俺の1番のお気に入りの場所。誰にも邪魔されない特別な場所。




 昼ご飯のパンを平らげると、さっき考えていたことを思い出す。魔力が無くても聖騎士になれると淡い期待を抱いてこの学校へ入学したが、結局それがどれだけ馬鹿げたことであるか思い知らされただけだった。高3となった今、夢ばかり見ているわけにはいかない。自分の身の丈に合った進路を考えなければ。



 するとその時音楽室のドアが開いた。

「あ、開いていたのね。ちょうどいい。ここならこの後授業もないからサボれるわね♪」

入ってきたのはセミロングの茶髪にオレンジの瞳の美少女だった。魔力持ちか。


「悪いけど、先客いるから。」

「大丈夫。私は別に気にしないから。」

 俺がするんだよ。若干イラつきながら俺はその女に言った。

「俺今考え事してるんだ。お前みたいな女がいると邪魔だ。出て行ってくれ。」

ここまで言えば流石に出ていくだろう。申し訳ないが今は魔力持ちと一緒にいたくない。



しかし、女は

「いやよ。なんであなたのために出ていかなきゃならないの?それに女じゃない、私には柊アリス(ひいらぎありす)って名前があるの。あなたの名前は?・・・ところで、考え事って何?何か悩んでるの?出ていかないけど相談相手くらいならなってあげる。」

いきなり来て何なんだ。第一、魔力持ちには一番相談したくない。選ばれた側の人間に俺の気持ちがわかってたまるか。


女に帰るよう言おうと顔を見た瞬間口が勝手に動いた。

 「俺は如月蒼だ。進路のことで悩んでたんだ。もう3年だしな。お前新入生だな。」


この学校は、学年によって上履きの色が違うから見分けるのは容易だ。

「えぇ、そうよ。あなた3年生だったのね。」



 わかったら敬語くらい使え。

「進路って何を悩むの?魔術エンジニアにならないの?」

俺の瞳が黒だからこの女は魔術エンジニアといったのだろう。当然のことだがやはりいざ言われると悔しい。

「後輩なんだから敬語くらい使えっての。別にエンジニアが嫌なわけじゃない。ただ、夢を諦めきれないんだ。」



なぜ俺はこんなにも素直に話すのだろう。1番嫌いな魔力持ちなんかに。


「それって、聖騎士?」

「あぁ、笑いたきゃ笑えよ。」

魔力のない人間が聖騎士だなんて、笑われるに決まってる。


「笑ったりしないわ。ねぇ、聖騎士ってそんなにすごいの?私今まで魔法学の授業サボってきたから何も知らないの。」



嘘だろ・・・?今までどうして来たんだよ・・・もう変にツッコむ気にもなれず俺は聖騎士について説明しはじめた。

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