15話・ルード

「魔法の練習場があるんだ!?」


 城の周辺に、衛兵や騎士、魔法使いの訓練場所が点在していて、そのうちの1つにお邪魔している。

 ひらけた場所じゃないと、魔法で炎や水が荒ぶったら危険だものね。まあ、私はどうせ荒ぶらないだろうけど……。

 寝て起きたら魔法が使える! なんてこともないだろうし。

 あれ、魔法が使えない方が都合よかったりする? 使い物にならないから、帰ってよし! ……、なんてならないか。

 ただ飯ぐらいとは、言われたくないしなぁ。すでに何度か、ご飯は頂いちゃっているし。


「アリスト殿下! リサ様!」


 見覚えある黒いローブを着けた人がやって来た。

 今日はローブのフードをとっている。


「ルードです。今日からよろしくお願いします」


 ペコリと挨拶してくれたので、私も挨拶を返す。


「リサです。よろしくお願いします。あの、水晶を持ってきた方ですよね?」

「はい」


 正面から、彼を見た。見覚えがある。顔がリードにそっくりで、違いは彼より身長が高いことと、眼が黄色と水色のオッドアイであることだ。とても不思議で綺麗な光彩の色に思わず、呟いてしまった。


「キレイな眼ですね」


 パッと、ルードが水色の眼を押さえた。


「ごめんなさい! 気にさわってしまったかしら。とてもキレイだったから、つい」


 私は慌てて、謝った。

 とても驚いた顔でルードも、慌てて言った。


「あっ……、すみません。あまりこの眼はいい思い出がないので……」

「ごめんなさい!」

「いえ、気にしないで下さい。……、キレイなんて初めていわれました」


 後半は、彼が小さな声で呟いたので聞き取れなかった。

 そしてなんだか、アリスがむぅっと少しむくれていた。


「リサちゃん。ごめんね。ちょっと書類の進捗見てくる!」


 え、あれ? 一緒にいてくれるんじゃ?


「すこーし、頭冷やしてくるね」


 にっこりしながら、聞こえるか、聞こえないか位の声とともにアリスがきびすを返していった。何か、触れてはいけないものに触れてしまったのだろうか。彼の笑顔が、少し不機嫌そうだった。


「ルード、リサちゃんをよろしくね。すぐ戻るから」

「はい」


 そういって、アリスは城に跳んで戻って行く。


「では、はじめましょうか!」


 残された私は、ルードと魔法の練習をはじめるのでした。

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