12話・二本目いりますか

「あれー? おかしいね?」


 はい、いったい全体どうなってるんですか?

 アリスも首をかしげている。あれから、色々な精霊さんの名前をお呼びしましたが、いっこうに魔法発動お返事していただけません。相性なんて、なかった……。

 そんなに私の魔力は美味しくなさそうなのかしら。

 しょんぼりしょげていると、頭をポンポンとなでられた。


「大丈夫。焦らなくてもいいよ。いざというときはボクが守ってあげるから!」

「精進します……」


 マタタビ棒一本でこれですよ?二本目渡しておきましょうか。もっと甘々になるのかな。


「さ、帰ろうか。そろそろ、暗くなってきたし」


 おいでって手を前にだされて待たれている。これは、あれですか。またお姫様抱っこですか?! あぁ、魔法が使えたら! 自分で飛んで帰れたかもなのにー! はずかしいよー!


「ヨロシクオネガイシマス」

「ん、はーい!」


 来た時より、ふわっと持ち上げられ、またしてもお姫様抱っこでのフライトをすることになりました。


「風の精霊よ」


 ふわりと風をうけて、中に浮く。


「じゃあ、出発するよ。落ちないようにしっかり掴まっててね」

「はい」


 アリスにぎゅっと、しがみつく。かなり、恥ずかしい。戻る間、誰にも見られませんようにっ!! は、重いとか思われたりしてないかしら?!

 そんなことを思いながらも、空を駆けるアリスの横顔をじっと見ていた。


 ーーー


「到着!」


 すっと、王宮の中庭に着地してお姫様抱っこから解放される。とても綺麗な花壇があった。


「ルードの魔法練習は朝から昼前までがリサちゃんの時間で、昼からは聖女の子を見るみたいだし、昼からは、ボクと帰還のヒントになるような書物がないか探しに行こうか。魔法の勉強ってことにしてね。王宮の所蔵本だけでもかなりの数になるだろうけど」


 そうだった! 帰る方法も探さなくっちゃ。なんだか、衝撃的なことが色々あって忘れてた。朝から魔法かぁ。さっきの感じだととても出来そうにないけれど。


「ア・リ・ス・様ぁぁー!」


 あれ、なんだかすごい剣幕で、人がやって来た。誰だろう?初めて見る人だ。アリスよりも身長があって、緑色の髪、深い緑色の眼には片眼鏡をかけている。


「私がっ! どれだけっ! 面倒になるかわかってて仕事全部置いていきましたね!?」

「え?」

「わぁ、ソーイ!ごめん、ごめん!」

「ごめんでは済みません! まだアリス様が必要な分の書類は残っていますから!」

「えーっ!」

「はやく、片付けて下さい!」


 容赦なくアリスを捕縛し、ずるずると引っ張っていく。


「ちょっ、まってよぉ! ソーイ!」

「待ちません!」

「リーサーーちゃーーーん」


 ずるずるずるずると連行されて行きました。

 はっ! 私はここからどうやって部屋に戻ればいいんだろう。

 ポツンと1人置いて行かれてしまいました……。


「どうやって部屋に戻ろう」


 ポツリと言葉にすると、花壇の花が、クスクスと笑うように揺れていた。


「大丈夫? 僕が連れて行ってあげようか?」


 ふいに、花壇の後ろから声をかけられた。聞き覚えのない声。今度はいったい誰ですか?

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