05話・処遇先は聖女じゃなくて
朝です。
目が覚めてもやっぱり、家ではありません。ここはどこでしょう。
「リサ様、お目覚めですか? お支度のお手伝いは必要でしょうか?」
物音に気がついたのだろうか、侍女さんが声をかけてきた。
「あ、自分で着替えはできます!」
とは言ったものの夜寝る前に着てきた服は洗濯するからと回収されてしまったのだった。
そろそろと、起き上がりクローゼットを開けるとドレスにドレスにドレス。あー、これは無理ですね。
「すみません、私の服まだ乾いていないですよね。手伝って下さい」
情けないが、後ろの留め具に手が届かない! 固い自分の体が憎い!
びらびらきらびやかなドレスは流石に引いてしまうので、動きやすそうな、この中で一番地味めのワンピースドレスを選び侍女さんに手伝ってもらって着替えを終えた。はやく、私の服もどってきてー。
「ありがとうございます」
お礼を言ったところで、もう一人の侍女さんがこちらにきた。
「カトル殿下より、伝言でございます。お支度が整いましたらお話があるとのことです」
階段前の扉に、昨日の小柄な男性が立っている。お迎えだろうか?
「わかりました。むかいますね」
返事をして、階段へと進むと、昨日と同じように軽く会釈してから彼は先導してくれた。
「あの、昨日お名前、伺えなかったですよね?」
何も会話がないのもつらいので名前という話しやすいキーワードで彼に話しかけてみた。すると彼は足を止めることなく素っ気ない感じで答えた。
「リードといいます」
「あ、はい」
そのまま、変わらず歩き続ける。無口な人なのだろうか? 会話が続かない。昨日と同じ、無言のまま階段、廊下を歩き、昨日とは違う場所へと連れてこられた。大きな扉が印象的だ。
リードが扉の前の衛兵さんとお話しをしている。
「失礼します! リサ様をお連れしました」
大きい扉を衛兵さんたちが開けてくれる。え、これって王様の部屋だったり?
扉を恐る恐るくぐると、真ん中に玉座があった。座ってる人が王様なのかしら。綺麗でスッとした顔立ち。意外と若そう!
えーっと、とりあえずしゃがんで頭を下げればいいのかしら? なんてことを考えながらリードについていき、絨毯敷きの半分くらいのところでリードが礼をして横にさがっていった。
あら、おいてけぼり。
えーっと、まごまごしていると王の斜め前に立っていたカトル王子が助け船をだしてくれた。
「彼女が昨日報告した、リサです」
カトル王子が紹介してくれたので、私は急いで頭を下げた。
「リサです。あのすみません。こちらの礼儀等知らなくて。どうしたらいいのかわからなくて」
「よい、こちらが異世界から召喚したのだ。しょうがあるまい」
思ったより理解があり、優しそうな王様でよかった。
「あの、私の処遇が決まったのでしょうか?」
「うむ、それなのだが聖女の裏、魔女の役目にあたってもらいたいと思っている」
「はぁ……」
「今の聖女は魔なる力をほとんど持たない者なのだ。本来聖女は両方の力を100持っている。天秤が傾かないようにと、彼女の影響で魔力を持つそなたが一緒にこちらに呼ばれてしまったのだろう」
えーっと、つまり巻き添え? 魔女とか、不穏な感じのする役目だなぁ。
「聖女はすでにこの国に忠誠を誓ってくれている。そなたも力を」「陛下!」
扉が開く。見覚えのある銀髪、猫耳、尻尾が入場してきた。あれ? 今日はなんだかカトル王子によく似たお召し物ですね。
「なんだ、アリスト。いまは――」
「彼女はボクと契約済みだよ。ボクのパートナーだから」
「何?! 何を勝手に!」
スタスタとアリスが横にきてくれる。
「だから、ボク専属だから! もらっていくね!」
「おい、どういうことだ。アリスト!」
カトル王子が叫ぶと、それにむかってイタズラっぽく舌をだしながらアリスは手をつないで引っ張っていく。今度はどこに連れて行かれるのー? って、アリストって? アリスちゃんの本名?
頭に? を浮かべながらずるずると私はひっぱられていく。
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