04話・猫 耳 !
「ん?」
目をもう一度こすると、人影はこちらにむかってきていた。
「え? え?」
よくわからないけど、気になったので窓を押し開ける。すると、人影は窓から中へと飛び込んできた。
「ここからかな?」
ぴるぴると動く猫のような耳。1つにまとめられているが長くて
「ボクはアリス。君はー?」
「あ、
「アッリサちゃん?」
「りさ です!」
「リサちゃん?」
こくこくと頷く。んーっと、上から下まで見られたので、こちらも上から下まで見返した。
お姉さん? お兄さん? 見た目は背が高い綺麗なお姉さん。服装はゆったりした服なので判別できない。声は女性的なハスキーボイス。やっぱり判別できない。
ボクと言ってるけれど、もしかして一人称がボクの女の人かも、うーん、わからない。
「アリスちゃんでいいんでしょうか?」
おそるおそる聞いてみる。アリスと名乗ったその人の耳がピンっとたった。
「いいよー」
そう言ってふにゃりと笑った。なに、この人、美人すぎる!
「アリスちゃんは何故ここに? と、いうかどうやって塔の上に?」
「んー? 魔法で空中夜散歩してたんだよ。そしたら、なんだかとってもいい匂いがしたんだ。それで、探してたらここからいい匂いがしたから飛び込んできちゃった」
なるほど、魔法の力で飛んでいたのか。魔法使いさんなんですね。
「リサちゃん、何か持ってるの?」
あぁ、はい。とてもとても思い当たるものを持っています。近所の友達の飼ってる猫さんにプレゼントするために持っていた、マタタビ棒(お徳用10本入り)。残業がなければ遊びに行く予定だったのよね。
「これですか?」
ポケットから一本引っ張りだすと同時にアリスの両耳が、さっきよりもっとぴーんと立った。
「それ! いい匂い! ちょーだい」
きらきらと目を輝かせて勢いよく近寄ってきた。美人が近い近い。
「いいですよ」
手にのせてあげると、アリスがとろんと
「いい匂いー」
嬉しそうにすりすりしている様は、とても猫さんだった。
ひとしきり、すりすりして満足したのか、アリスはまた話しかけてきた。マタタビは手放さずに。
「リサちゃんはなんでここにいるの?」
私も聞きたい。なんでここにいるんだろう。と、いうことは置いておいて自分に起こった出来事を、かいつまんで説明した。
「と、いうわけでして。私もよくわからないんです!」
「ふぅん。難しいねぇ。リサちゃんはおうちに帰りたいの?」
「帰りたいですよ。こんなわけがわからないとこ。必要とされてる聖女だっているんですよ? 私いらないですよね?!」
どぅどぅと、手で頭をなでられた。
「じゃあ、リサちゃんが帰る方法を探さないとだ。よっし、任せて!」
「へっ?」
「これのお礼。ボクと契約しよう!」
マタタビをちょいちょいしながら、アリスは自分の指にはめている二本の指輪のうち一本をするっとぬいた。
「契約?」
「そう」
ちゅっと軽いキスを指輪に落とし、はいっと手をだしてくる。
「えっと?」
「魔法?」
にこっとアリスは笑った。
「これで君とボクはパートナーだよ。じゃあ、また明日!」
そういって、アリスは頭にポンと手をのせてから、バイバイと手をふり、ひゅうっと空の散歩へともどっていった。
外は気持ちのいい夜風がそよそよと吹いている。
「任せろって、どういうことなんだろ。それにパートナーって何?」
ポンとなでられた、頭を片手でおさえながら私は考えていた。
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