蛙を吐いた日

寅田大愛

第1話

1.


 あーもーね、なんかね、蛙を吐きたい気分。お腹のなかにね、蛙がたくさんいるのよ。げこげこ鳴いてて気持ち悪いの。ちょっとお手洗い行ってきていい?蛙吐いてくるから。大量にね。おえっ。

 ああ、ごめんね?気分悪くなってない?大丈夫?

 でね、なんの話だったっけ?

「ぼくのことだよ」

 ああ、そうねそうだった。

 あたし牛を飼いたいんだけど。しゃべる牛をね。

「は?」

 いやね、そういう顔つきでみられてもあたしは困っちゃうんだけどね。仔牛ね。仔牛、可愛いでしょ?

「マンションでは無理じゃない?」

 それもそうだよね、わかるわかる。じゃあ模型でいいからさ、牛、買ってきて。可愛いじゃん、牛ってアイテムが。ね?

「東京で? ベこを? 飼うの?」

 いやそれじゃなくて。フィギュアね。可愛いやつ。ごめんごめんやっぱ要らないわ。だって家にはもうすでに二百体くらいあるもんね、フィギュアが。

「ないでしょ、一体も。玩具が欲しいとか亜香里は子どもっぽいね」

 じゃあ別にいいです。






 

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