第169話 蔦の芽やラーメン店の窓高し


 

 

 

 そのラーメン店は、ミナヨが承知しているだけでも数人は経営者が入れ替わっているのですが、店の壁一面を覆う蔦は引き継がれ、近ごろは妖怪の館めいて……。

 

 

                🍜

 

 

 ミナヨが気になるのは、かつて経営していた事務所が蔦の繁茂に悩まされていたからで、吸盤で壁を侵食して行く生命力は半端ではないので、茂るに任せておけば素人の手に負えなくなるし、落葉の季節、近隣に多大なご迷惑をおかけすることは目に見えているし、早く手を打ったほうが……と他人事ながら心配になるのです。


 枯蔦に緑の芽吹きが始まる光景は、傍目にはのどかな春の一景に過ぎませんが、高い場所にひとつだけある窓まで覆う勢いに余計な心配をしているミナヨです。

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