第167話 バレンタイン奥歯に熱を持ちにけり



 

 

 コロナ禍のバレンタインのチョコは、衛生上、手作りより市販品が主流との報道に、ヨウコはじんわりと懐かしい、ほんの少しほっとした思いに駆られています。


 小さな会社を営んでいたころは、1月中旬になると専門店に出向いて、スタッフの人数分の、コンパクトでも最高級のチョコを予約する慣例になっておりました。

 

 

                  🍫

 

 

 そして、当日はだれよりも早く出社して、全スタッフのデスクの上に、きれいに包装されたチョコレートを、リボンの位置を確かめて、そっと置いておくのです。

 

「社長、ありがとうございま~す!」

「義理チョコでごめんね」(≧▽≦)

 毎年交わされたそっくり同じ会話。


 時代の怒涛に抗しきれずに解散した会社の整理業務&喪失感に心身を破壊されていた時期を過ぎたいまは、2月のあの日を甘酸っぱく思い出しているヨウコです。


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