第155話 日脚伸ぶ駅より放射状の街


 

 

  

 さしもの冬も、大寒を過ぎると、朝も夕方も暗かった冬至のころより目に見えて日が長くなり、何かいいことが待っていそうな、そんな気にさせてくれます。🌅


 月に何度か東京の本社の会議に出席するイチローには、電車待ちまでの時間に、駅舎の2Fの窓から駅前通りを眺める習慣が、いつしか出来上がっています。


 枡目の城下町を整備したとき、駅から真っ直ぐ伸びる道路が放射状につくられ、その道筋に添ってビルや商店が並び、独特なおもむきの街並みが定着しました。

 

 

                 🚈

 

 

 その昔、近郊の温泉までチンチン電車が走っていたメイン通りを真っ直ぐ進むと旧制高等学校跡の公園に至りますが、こんもりとしたヒマラヤ杉の森の上に連なる東山の稜線が少しずつ明るみ、朝日が昇り始める様子は、神秘的かつ荘厳で……。


 コロナ禍の現代社会は混沌の真っ只中にありますが、「太陽が昇り、人智がある以上、近未来に希望を抱いてもいいのかな。そういえば今日は立春。長かった冬も終わりだな」……ホームへ足を運びながらそんなことを思っているイチローです。

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