第153話 起重機の宙へ伸び行く寒四郎

 

 

 

 

 何の作業場か、何年も前から起重機が活動しているスペースがあります。⛅


 カンと音がするほど張り詰めた冬の空に向けて、その先端がぐんぐん伸びて行く様子を車の運転席から眺めながら、数十年前、仕事の関係者と中国は敦煌・莫高窟に行ったとき味わった恐怖を思い出し、いまさら青ざめてみるヒロヤです。(^_^;)

 

 

                 ✈

 

 

 広州から民間機が出せなくなったので軍用機で行ってほしいと、とつぜん添乗員から告げられ、数十名の歴史研究者全員で「ええーっ?!」と言いながら仕方なく乗りこんでみると、選りにも選って、ヒロヤの席だけシートベルトが壊れている!


 あ、ちょっと……訴える間もなく軍用機は動き始め、軍服の機長の操縦と来たらそれはもう粗っぽくて、壊れたベルトを握り締め、生きた心地がしませんでした。


 着地準備を始めた窓から見下ろす砂漠の空港は真っ暗で、飾り気のない「敦煌」の2文字だけが赤く浮かび上がっていて、フラフラになって降りるとき、お世辞にも愛想がいいとは言いがたいスチュワーデスから、なぜか飴を渡されたのでした。

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