第139話 隙間なく山茶花咲かせ老夫婦

 

 

 

 

 自動車整備工場で働いていたツヨシと、保育士(当時の呼称は保母)をしていたマナミ夫婦は、もうかなり以前に1男2女が独立してからずっとふたり暮らしで、子育ての苦労や思い出が染みついた古い家を修繕しながら住みつづけています。

 

 

                 🌼

 

 

 建て増しに建て増しを重ねたので、初めての人には、どこが入口かわかりにくいまるで迷路のような家ですが、ひとつだけ、よその家にはない目印があります。


 ――鬱蒼と生い茂った山茶花さざんかの大木。🎄


 長男の誕生記念樹ですから、かれこれ半世紀の年輪を刻んでいるはずで、大した手入れもしないのに、毎年冬になると、真紅の花をびっしりと咲かせてくれます。


 互いに口には出しませんが、老夫婦はこの木と最期を共にするつもりでいます。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る