第110話 北風や握り返してをさなの手


 

 

 

 早くも凍りかけた夕暮れの道を、ふたりの幼子の手を引いて歩いて行きます。


 赤とピンクのミトンをさせた小さな手が心細げに母親の手に縋って来て、それを握り返す雪模様の手袋にも、幼い心が抱えている繊細なものが伝わって来て……。

 

 

                ✾

 

 

 ふたりとも、ゼロ歳児と呼ばれるころから、保育園で集団生活をさせて来た。


 今日は行きたくないと遠慮がちに訴える日も、連れて行かざるを得なかった。


 その残酷を胸のなかで詫びつつ、一刻も早くこの時期が終わってくれますようにと祈るしかなかったあの当時の切なさが、いまもミズエを苦しませているのです。


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