第60話 背もたれに預けるむかし秋の声
あのころの自分は思い上がっていた。
傲慢が知らずに他者を傷つけてきた。
そのことを思い返すとき、ミチアキはわが胸を掻きむしりたくなります。
健康な心身も、与えられた環境も、自力で勝ち取ったものと思っていた。
その愚昧が、病気を得たいま、みっしりとした重みで迫ってくるのです。
💺
あのころ、凛然たるスタンスに共鳴した茨木のり子さんの『倚りかからず』。
前半の「できあいの思想、宗教、学問、いかなる権威にも倚りかかりたくない」への共感は現在も変わりませんが、後半は、自分の耳目が使えず、二本足で立てない人たちにとっては残酷に響くポエムではないか……そう思うようになりました。
詩人の生きた時代背景からプライベートな事情まで、すべてを承知のうえで。
🌌
詩という偉大な芸術にも、詩人が生きた時代の影がちらつく。
それは仕方のないこと、いえ、むしろ当然のことなのかもしれませんが、純粋にこの詩に寄り添う気持ちが、時代の趨勢と共にいつの間にか失せている……それが団塊の世代のひとりであるミチアキの現実であることもまた粛然たる事実であり。
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