白い紫陽花

有馬悠人

第1話 向日葵編 出会い

ひまわり


キク科、ヒマワリ属

開花期 7月から9月ごろ

花言葉 憧れ、あなただけを見つめる


快晴。春先自分が住んでいる地域では、珍しい。データ的には晴れの日が全国で最も少ない地域らしい。3月の中盤、心機一転、新天地、新たな人との出会いなどときめきや不安に身を置いている人は多いだろう。まあ、自分には関係ない。早い段階で就職活動からドロップアウト。実家でダラダラ過ごす日々。特にやることもないし、やりたいこともない。自分は必要とされているのかと自問自答していた。大学では教師を夢見て、教員免許をとったが先生になりたいわけでもない。今の先生になろうなんて考えるやついるのかと思うくらい教育現場は過酷な状況だと教育実習の時に思い知った。なりたいものを失って大学を卒業してしまっていた。いつもより早い時間に母さんに呼ばれた。


「寛(ひろ)、暇してるなら私の友達の娘さんがお店を出すからその準備の手伝いに行ってくれない?女の子1人じゃ不安で手伝いが欲しいらしいいの。」


確かに時間はある。無職というわけではないがこの時期に仕事はない。家に引きこもっているよりも少しでも外に出ていた方が気晴らしにはなるだろう。人間暇になるとろくなことを考えない。母さんの頼みなら自分に拒否権は存在しない。


「わかった。行ってくるから洗濯と掃除お願いね。」


母さんは少し嫌そうな顔をした。3月中のほとんどの家事を自分がしていたから、自分がこの家から出るということは家事は自分がやらなければいけなくなる。家事が苦手な母さんにとっては苦行だろう。しかし言ってしまったことは引くことができないし友人の頼みごとということもあり胸にトンッと手をつき、


「まかせなさい。寛より完璧に綺麗にしてみせる。」


行動と言動がとても可愛らしい。我が母ながらしぐさだけならトップアイドルにも負けず劣らず。年齢的に無理はあるが、父さんは未だに可愛い可愛いと常に言っている。


数分で支度をして、家を出る。そういえばここ1週間は外に出ていなかった。久々に浴びる太陽の光はギラギラ少し不快だった。母さんから聞いた場所は昔自分が精神科医に通っていた時の病院だった。家からは徒歩で行ける距離だったので、車は使わずに行った。もしそれが病院内だった場合他の患者さんに迷惑がかかってしまうのを恐れたから。この病院自体には約3年ぶり。母さんは頻繁に行っているらしいが体が丈夫な母さんに病院に行くような用事はなさそうだが病院の中に友達がいるなら頻繁に行くのも頷ける。迷惑になっていなければいいのだが。それよりもこれから会いに行く娘さんは気難しい人でなければいいが。久々に母さん以外の人と話すから癖の強い人や威圧的な人はやめて欲しい。

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