02

 屈折していたから、まっすぐな生き方の彼女に惹かれた。


 生まれから何もかもが、屈折した生き方だった。取り違えとかなんとか言っていたが、実際どうだったのかは、こわくて訊いてもいない。


 親は、兄弟姉妹は、自分を愛してくれた。


 でも、元から、たぶん、生まれる前から、性格が屈折していた。まっすぐ進む生き方が、できなかった。横断歩道ですら、小脇に避けて進む。


 彼女は、私の太陽だった。


 どこまでもまっすぐで、どこまでも見境がない。


 はじめて会ったのは、小学校のとき。お花係だったので、他の生徒が倒した花瓶の花と水を、直していた。そこを先生に見られて、花瓶を倒すなと叱られた。よくあることだ。


 そのとき、彼女が小さい身体で先生に体当たりし、倒したのは他の人間だと主張した。それからの付き合い。


 当時のことを訊くと、彼女は、覚えていないと言って笑った。まっすぐ生きる人間には、過去が必要ないんだと思った。生き方そのものが、眩しい。


 彼女は、私の大きな身体をよく触って遊んでいた。小学校の頃から大きな身体だったことは、覚えていると言った気がする。たしかに、大きな身体だった。だから、先生に花瓶を倒したのが自分だと思われても、仕方がない。大きな身体だし。


 良くないな。


 昔のことばかり。


 友達以上恋人未満の関係。彼女は、私の大きな身体を触りはするけど、それ以上は踏み込んでこない。自分も、踏み込もうとはしなかった。屈折した感情は、彼女と一緒にいても、直らない。


 そして、別れを切り出した。


 このまま、ずっと一緒にいたら、彼女のまっすぐな生き方を邪魔してしまう。そう思った。屈折した自分には自信がなかった。


 彼女は、にこっと笑って、わかった、とだけ言った。


 自分と一緒にいたい、付き合ってほしいと、言われたかった。でも、言われなかった。そもそも、別れを切り出したのはこちらなのだから、彼女に期待するほうがおかしい。


 自分一人の部屋。


 これからも。


 ひとり。


 屈折した生き方を、続けていくんだろうか。

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