即終了RTA配信
いよいよRTA耐久配信の時間となった。
既に待機所のチャット欄では、コメントがすごい速さで流れている。
みんな「またこいつ何か頭の悪いことしようとしてるぞ」という雰囲気を出している。
まあ確かに頭の悪いことには間違いない。
「なんでクリア耐久じゃなくいきなりRTA耐久なんだ」という声も多い。
さらに、「どうしてカラオケ24時間耐久の後にまた時間がかかりそうな耐久ができるんだ」とも言われている。
ふふふ、化け物扱いされるのであればとことん化け物になってやればいいのだ。
タグに畏怖なんて付けられるなら、その通りのイメージの振る舞いをしてやろう。
オープニングを流し、挨拶をする。
「ごきげんよう、レイフ・フェイク=リベリオンだ。今日も集まってくれてありがとう。さっきカラオケ耐久配信を終えたばかりだが、また耐久配信をやっていこうと思う。世界記録を出すまでは終わらないからそのつもりでよろしく頼む。」
画面にはGetting Over Itのスタート画面が載っている。
チャット欄は「体力どうなってんだ」「全然疲れてる様子ないぞ」「アスリートでもこうはならないだろ」と僕の体力がどうなっているのか疑問に思っている人もいる。
中には「やっぱり入れ替わりながらカラオケ耐久やってるんじゃないか」という声もあった。
まあ実際そう思うのが自然な流れだよなあ。
「金壺になるまでにたたき出せるように頑張るぞ!まあ、僕は事前予習をしてきたので問題ないと思うがな。一発でたたき出して見せよう。」
実際は一発でたたき出せるはずだ。
ただ、TASを見せられていると疑われてはいけないので、そこは注意すべきだろう。
最初は少し肩慣らしをこめて、大体世界記録周辺ぐらいに抑えておくか。
「では、始めようか。軽く世界を超えてみようじゃないか。」
開始する。
壺から男が出てきてハンマーを手に持つ。
「さあ、行くぞ。」
どんどんと進んでいく。
基本的にはマウスを動かすことによって腕を回し、ハンマーをひっかけて進んでいくゲームだ。
細かい操作が求められ、少しでも間違った部分にハンマーを当てると、時間を多く浪費したり、ひどいときには下の場所まで戻されてしまったりもする。
初心者はまずマウスの操作に慣れずに何度も下に戻され、発狂する羽目になる。
しかし、僕には関係ない。
そもそも入力はマウスでは無く自分から発せられる電気信号だ。
思った通りのポイントにハンマーをひっかけ、無難に進んでいく。
チャット欄も「上手すぎぃ!」「RTA一発目で成功しそうなやつおる?」と盛り上がる。
「まあ、順調だな。これにみんな手間取っているのか?」
視聴者や発狂している人たちを煽る。
このキャラだと煽り映えがほんとに良い。
チャット欄も「あなただけです」「ほんとは難しいゲームなんです」とあきらめるようなコメントが流れている。
思うところはあるが、まあこうなったのだからしょうがない。
「さあ、雪山のところまで来たぞ。」
雪山は良く滑るため、玄人でも中々時間を浪費させられるポイントだ。
しかし僕にそんなことは関係ない。
ノーミスで進んでいく。
そしてすいすいと進んでいき、あっさりと終わった。
「あっけなかったな。タイムはどうだ?」
1分15秒だった。
世界記録が1分11秒周辺のはずなので、まだ記録更新と言うほどではない。
まあ、一本勝負のRTAという分には十分成功しているが…
「世界記録更新には足りなかったな。本気を出す必要がありそうだ。」
また厨二病発言ととられそうなことを言う。
しかし、こうでも言っておかないと、つじつまが合わないようなことを今からするのだ。
あ、でもそのうち厨二発言だけの動画を切り抜きで上げられそうだな…
「さあ、始めるぞ!次こそ成功だ!」
そして「最初からやり直す」をクリックする。
動かせるようになった瞬間、僕は完璧に動かす。
「みろ、このマウスさばきを!正確無比なその挙動を!この制御され尽くした動きをその目に焼き付けろ!このゲームの歴史は今日で終わるのだ!」
後で見返したら絶対に悶絶する言葉を吐きながらぐんぐんと進む。
視聴者も「これいけるんじゃね?」と本気で世界記録更新を期待し始める。
「さあ、終わりも近づいてきたぞ!祝え!僕がこのゲームの王になる!一生語り継がれる存在だ!動画にすらできないことを配信でやってのけるのだから!」
そう言って一気に登っていった。
あっという間にエンディングのシーンを迎える。
記録は52秒だった。
そして配信時間はわずか3分で終了した。
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