花火大会(意味深)
さて、出し物がいよいよ最後へと移る。
「さあ、いよいよ最後の出し物だ!これより収益化を祝って花火大会を行う!!」
もちろん、ただ花火を打ち上げるだけでは面白くない。
それでは花火のアニメーションが流れるだけになってしまう。
実際、チャット欄も今まで見せてきたものに基づく期待と、ただ花火を打ち上げるだけじゃないのという不安がない交ぜになっているようにも見受けられた。
しかし、僕はその斜め上を行く。
「花火を打ち上げるだけのアニメーションで、何がそんなに盛り上げられるのかと思っていることだろう。無理もない。ただ花火のアニメーションを映されても、わー綺麗だなあと思うだけだ。それじゃあ退屈になるに決まっている。」
そこまで言ったところで、一旦言葉を区切る。
チャット欄では、「なんだ?何が言いたい?」といったコメントが多く見受けられる。
何を言おうとしているのかがつかみ取れず、困惑しているのだろう。
そして再び口を開く。
「そこで今回は趣向を変えた花火大会を行うことにした。題して『お前が花火になるんだよ!大会』だ!!」
チャット欄が一気に「は?」というコメントで埋め尽くされる。
さりげなく低評価も増えているが、想定通りだ。問題ない。
「待て待て早とちりするな。確かに打ち上がるのは君たちだが、君たちを爆発させたいわけじゃない。花火の中心に置くだけだ。」
チャット欄がまたもや困惑する。
そりゃ何が違うんだと思うことだろう。
「まあ、説明するのもあれだから、とりあえず見てくれば分かる!締まらない始まりになってしまったが、いよいよ最後を締めくくるイベントだ!それでは『お前が花火になるんだよ!大会』を開始する!」
そして曲の前奏が始まり、最初の花火が打ちあがった。
一人の参列者が突然空中に飛んでいき、大きな花を空中に咲かせた。
色とりどりの花弁が鮮やかに空を彩るが、目を引くポイントはそこではない。
真ん中に大きく名前が書かれ、その下に「ありがとう、君のようなファンを持てて幸せだ。」と書かれていた。
「そう!スパチャ読み上げの代わりに、この形式を取らせてもらった!スーパーチャットを投げてくれた人の名前、コメントの返信が書いてある!返信の中身はまた暇なときにアーカイブでも見返してくれ!」
そう、スパチャ読みができない分、文字で反応を返すことにしたのだ。
これなら喋っている間や歌っている間も反応を返すことができる。
僕ならではの感謝の表し方だ。
チャット欄も「こんなスパチャ読み初めてだ!」「いつの間に返信する暇があったんだ…」と驚いてくれている。
「じゃあ、このまま花火を打ち上げつつ、歌で締めくくるとしよう!最後は花火大会らしく『打上花火』だ!」
三年前に流行った映画の主題歌だ。
タイトルも曲調も今持ってくるのにふさわしいだろう。
歌いつつどんどん花火が打ち上がっていく。
同時に何人も参列者が打ち上がり、夜空に大量の華を咲かせる。
黒いキャンバスの中に綺麗に煌めく火花たちと歌い上げる旋律がどこか心を感傷的にさせていく。
チャット欄も感動するコメントで埋め尽くされていたが、その中で一つのコメントが目についた。
冷静に考えてみたらそうだろう。
何せ人間が打ち上がっているのだから。
そのコメントに書かれていた言葉を心の中で噛み締める。
感謝と笑いが入り交じり、現実だったらとても見せられない顔をしていたことだろう。
「へっ、きたねえ花火だ…」
なぜだか涙を流せないこの身体が恨めしかった。
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