チート能力マルチタスク

 Live2Dの設定も終わり、いよいよ動かす段階だ。




 通常、VTuberは動かすときにFaceRigという顔認識ソフトを使用して、Live2Dで設定したイラストを動かしていく。




 しかし、僕は違う。








 「そもそもカメラなんてないしなあ…」




 僕は現実世界ではなく、この仮想空間にいる。




 カメラで顔を認識させることがそもそも無理なのだ。




 しかし、僕には通常の人にはできないことをやってのけることができる。








 「リアルタイムでLive2Dの数値をいじって動かせるのすごいなあ…」




 そう、この空間にいるからこそできる芸当である。




 仮想空間内での行動は現実世界のような制限が無く、マルチタスクも容易にこなせるようになっている。




 一番すごい点は、それぞれでやっていることを混同せずに理解できることだろう。




 仕組みが全然理解できないが、ほんとどうやってるんだか。








 とにかく、この能力のおかげで、最強の学習・再現ソフト様様に計算させつつ、その数値通りに瞬時に動かすことができる。




 言ってみれば、2Dの段階から失敗しない表情を動かす係がついているという状況だ。




 正直言って、個人勢にしては反則級だろう。




 まあそういう訳で、僕はFaceRigを買わずに済んだ。








 「最初にするのは動画投稿かなあ…」




 個人勢の場合、最初はほとんど配信に人は集まらない。




 今8万人近く登録者がいる個人勢VTuberも初配信の同接が3人で黒歴史と語っていた。




 そのため、最初はある程度、動画投稿をした方が良いだろう。




 




 「どんな自己紹介しようか…」




 自己紹介動画はそこそこ見てもらえることができる。




 やっぱり、そこでインパクトを残さないといけない。




 最初の掴みが大事だ。




 




 「やっぱり企画で押すかなあ。」




 強いインパクトを与えるには、映像のクオリティの高さ、設定の強さ、ネタ性、そしてこれをやっていきます!という内容の強さが重要だ。




 映像のクオリティは問題ないとしても、設定はそこまで強いとは言えない。




 やっぱりできることでアピールしつつ、ネタの強さを主張していくしかない。




 さっそく企画を考えていこう。








 「やっぱりしょっぱなから耐久するのは目を引くよな。」




 この体なので、24時間どころか何日でもぶっ通しで活動し続けられる。




 耐久と言えば壺オジだが、あれは有料ゲームなので今の僕にはすることができない。




 どうせならもっとしんどいことをしよう。








 「隔日24時間ぶっ通しカラオケ耐久配信とかどうだ?」




 この存在になったおかげで全く消耗することが無く、クオリティも高いレベルを保ったまま歌い続けることができる。




 ほんとなら何日だってぶっ通しでできるが、さすがに色々と問題が発生するので隔日24時間が限度だろう。








 「これなら目に留まるだろう。」




 VTuber界において、こいつやばい奴と思われることはとても重要だ。




 おとなしい人は一定層の需要があるが、人気が爆発するのは中々難しい。




 全く疲れずに24時間ぶっ通しで2日に1回配信するのを見て、なんだこいつと思われることは間違いないだろう。








 「よし、これを全面に押して自己紹介動画を作ろう。」




 そう決めて僕は動画制作に取り掛かった。

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