五里霧中ヒロインズ

亞泉真泉(あいすみません)

プロローグ

 発端は数年前に遡る。


 人類の中から、それまでの個体とは明らかに異なる特殊な能力を持つ者が現れ始めた。


 強力な力を持った者は、人々から歓迎され崇められた。

 しかし、次々に能力者が発見され、人々がその存在に慣れると共に、反発する者、危険視する者たちも増える。


 多くの能力者が現れたと言っても、何百万人に一人という圧倒的にマイノリティで異質な存在である。

 そこには差別的な迫害もついて回った。


 新たなる社会問題として人類はその異質な存在と向き合わなければならなくなった。


 時を同じくして、世界の各地で怪獣が現れた。


 意思の疎通が出来ず、目的もわからず、ただ破壊だけを繰り返す怪獣に対して、人類は対応を迫られる。

 世界の軍事バランスをも揺るがせかねない事態に、多くの思惑が絡み、決定的な対処を出来ずにいた。

 そこで名乗り出て事態を鮮やかに収束させたのが、特殊な能力を持つ者たちだった。


 特殊な能力を持つ者と、怪獣の関連性は未だに不明とされている。

 世界に現れた二種類の異質な存在の関係を政治的に利用しようとする動きもある。

 しかし、怪獣が現れるという世界の状況と、能力者たちが存在するという二つの錘は、かろうじて世界に均衡をとっていた。


 そしてもうひとつ、世界にはすでに数百名の能力者の存在が確認されてはいるが、いまだ男性の能力者は見つかっていない。


 それゆえに、彼女たちはスーパーヒロインと呼ばれている。


 この日本においては、さらに状況が特殊な方向へと展開していた。


 怪獣と戦う彼女たちはパフォーマンスショーのように人々の興味を惹きつける。

 人々は熱狂し、チームを組んだスーパーヒロインは人気を争い、一種アイドル的な存在として受け入れていた。


 怪獣退治という、人類の救済のための戦い。

 その姿はニュースとして流れ、人は思い思いのチームを応援する。


 怪獣を倒す実力はあるのに人気がいまひとつのチーム。

 ほとんど勝てないのに一部から熱狂的に愛されているチーム。

 人気実力ともに誰もが認める国民的チームなど、さまざまなスーパーヒロインチームが今も各地で怪獣から人々を守っている。


 そんな中で、ラブ・ストライクズは、結成当時は話題もそれなりにあったが、怪獣退治において捗々しい成績も収められず、勝率とともに人気も下降中。


 現在は数多くいるB級スーパーヒロインチームの一つというポジションに収まっている。

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