第44話
スペース大遊撃ロケット部隊の打ち上げは無事成功した。
現代の科学力で最高性能の六隻のロケットは衛星軌道上でランデブーをし、スウィングバイで隕石に向かう。
そしてそれに付き従う一隻。
民間企業の数社の協力によって製作されたもので、ロケットエンジンは過去に宇宙進出した実績を持つ、言い方を変えれば中古のものだった。
六隻のスマートなフォルムとは異なり、四角く扁平で機体の両脇には左右二機ずつのマニピュレーターがついている。
それをパタパタと動かすと、まるで亀が泳いでいるようなルックスからガメス丸と名付けられた。
搭乗しているのは三人。
ハンド・メルト・マイトとサンシャイン・ダイナ、そして操作を担当する一般人の女性、コバヤシマル。
無事六隻はランデブーをし、お互いを連結して一基のステーションとなった。
ガメス丸はその姿を後方から撮影し地球に映像を送っている。
スペース大遊撃ロケット部隊の計画はこうだった。
二隻のロケットは前方がドリルになっていて、隕石に張り付き次第削岩を開始する。
隕石の中ほどまで掘り進んだところで、大型弾頭となっている一隻を設置。
不慮の事故を考え、念のために大型弾頭となっているロケットはバックアップでもう一隻ある。
他の二隻は、帰還のための設備や燃料を詰んだものだ。
世界中から集められた優秀な特殊能力者たちは、初めてステーションの中で顔を合わせた。
地球を救う、その使命に心を誓ったスーパーヒーローたちだった。
しかしステーション化してから四日、事件は起きた。
ステーションは連結を解き、二隻のロケットが隕石に向かう軌道とは別のルートに進んでいった。
ステーションの中で、ロケットジャックが起きたらしい。
特殊能力者の一人が、命の最後の灯火を使ってそのことを地球に伝えた。
パーティが開かれ、各々の特殊能力を紹介し、作戦をスムーズに進める計画を立てていた。
一隻のロケットには四名から六名まで、ステーションには計三十一名の特殊能力者が乗っている。
その中には、温度を操る能力者、植物を成長させる能力者、空気圧を変化させる能力者、水分を操る能力者、放射線を曲げる能力者、重力を変化させる能力者、光を蓄積させる能力者、細菌で治療をする能力者など、宇宙において活躍できる人材が揃っていた。
そもそもこの任務自体の成功率は低い。
何度計算をしたところで成功率は8~12%という値しか出ない中、現場での奇跡的な運用が頼みだった。
特殊能力者たちはそれを承知で命をかける覚悟で臨んでいた。
全員その気持ちに偽りはなかったのだろう。
だが、ステーションの中で特殊の力者たちが介した時、心の中である思いが生まれる。
「この能力者たちが集まれば、宇宙でも生き抜いていけるのではないか」
悪魔の囁きは、一人、また一人と魂を塗りつぶしていった。
すでに宇宙にいる。
この瞬間にしか機会はない、という事実が彼らの行動を促した。
当然ロケットに搭乗していた多くの特殊能力者たちは反発をした。
そしてそこで争いが起こった。
血が流れ、命が消え、勝利した者たちは帰還用の二隻を分離し、地球と別れを告げ宇宙の闇へと向かった。
残されたのは、乗組員が全滅しただの宇宙のゴミとなりはてた四隻のロケット。
そしてその後方から追いかける中古のガメス丸だけだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます